TOMOO SHOKEN

うつわとともに 祥見知生

3月のこと


早いもので、3月も最終週となりました。

能登は取材で何度か訪れたことのあるご縁のある土地。大きな地震のあとも余震が続き、心配をしています。ライフラインが早く回復され、普段通りの日々に戻りますように。


秋に葉を落とし冬の間はじっと固くそのままでいて何の変化もないように
見えた「オオデマリ」が、あるとき、いっせいに新しい芽を吹きはじめ、毎日目に見える速さで、その瑞々しい若い緑を輝かせています。

春、なのですね。

この3月は、本来なら毎日たくさん「書かなくてはならないこと」があったのに、ずっと文章を書く時間がもてずにいました。

きっと、多くの時間が密度が濃く過ぎていったのでしょう。

その一つひとつを短い言葉で。

一つめ
小野哲平さん早川ユミさんの展覧会の初日、鎌倉山・ギャラリー招山でオープニングパーティがありました。
ミュージシャンの友部正人さんもいらして、きらきらした瞳の彼と、少しの間、話をすることができました。

実は、友部さんの曲が「DVDブックうつわびと小野哲平」中に流れるのです。
この本の制作中に、何度も友部さんの曲を聴いて、いまさらながら、その『歌』の持つ力に驚き、心打たれ、若い時分から何事にもおもねることなくまっすぐに信じる言葉を詩にこめてきたことを深く感じることができました。

その彼が、突然、哲平さんの初日の夕方、うつわ祥見へ現れたのですから、本当に驚きました。
友部さんとユミさんは若いときからのお友達、ユミさんからの手紙を読んで、鎌倉へ来てくださったのでした。

二つめ

3月16日青山ブックセンターでの「DVDブックうつわびと小野哲平」特別編「土から生まれるもの。」の上映会が行なわれました。

30分ほどの映像を見ていただいた後に、私と早川ユミさんのおしゃべり。
「土」というものからわたしたち現代人は離れてしまったのではないか・・・DVDブックの制作過程で、わたしが強く感じたことを皆さんの前で話をしました。
ユミさんは、映像の中に流れる飼っていたニワトリが、その撮影後しばらく経ってやっぱり飼っている犬に食べられて死んでしまった話をされました。
ユミさんは若いときからずっと、ニワトリと一緒に暮らしてきて、その死んでしまったニワトリも、雛から育てたもので、いつも食べ残した青菜などをニワトリにあげようと思ってポケットに入れていたのに、ふと「もういないんだ」と思われたときの、心にあいた穴について、しみじみと語られました。そして、「自分はニワトリと、土と、つながっていたんだって思った」と実感のこもった言葉でおっしゃった。
その話がとてもよかったです。印象に残る言葉でした。

上映会へお出かけくださった皆さま、ありがとうございました。


三つめ

「DVDブック うつわびと小野哲平」の仕事がいよいよ大詰めとなりました。

 本編の編集作業も終わり、本部分ももうすぐ印刷の作業に入ります。

 初めて一緒に仕事をした映像ディレクターの工藤晶彦さん、いつも私の本を担当してくださるデザイナーの亀井啓太さん、今回おふたりの仕事は本当に素晴らしいです。主張が過ぎることがなく、品格を持って、それぞれの仕事をかっちり仕上げていく。その仕事に対する態度に、何度助けられたことでしょう。
彼らの真摯な、そして細部にわたり力を尽くした本作品を、皆さんに見ていただきたいと、思っています。


 「DVDブック うつわびと小野哲平」
  4月25日発売となりました。
  定価 3990円
  発行 株式会社ラトルズ
  
  
うつわ祥見は、3月29日(木)〜4月1日(日)まで 常設の器を展示するOPENDAYです。
期間中は無休です。