TOMOO SHOKEN

うつわとともに 祥見知生

高知エピソードその3 土から生まれるもの 小野哲平展


『DVDブックうつわびと小野哲平』は、2005年から2006年の1年間、高知の小野哲平さんの工房を訪ねて薪窯の窯入れ、火入れ、窯出しをハイビジョンカメラで撮影した映像と、土に関わり器を作り続けてきたうつわびと小野哲平さんのインタビューを掲載したブック、映像と言葉というふたつの表現があわさった本です。

本というものがなぜ生まれたのか。

それは「そういう本を作りたい」という『熱』のようなものに駆り立てられてということが少なからずもあると思う。

この『DVDブックうつわびと小野哲平』も、そうした熱に突き動かされて作った本の一つです。

制作にあたって、わたしは「見えないものに突き動かされて」という短い文章を書きました。

             
見えないものに突き動かされて

小野哲平さんは、高知県香美市にある谷相という集落に住んでいる。谷に相と書いて「たにあい」と読む。標高四百五十メートル。古くから地形を生かした棚田の米づくりが行われ、現在も村人の大半は農業を営んでいる。集落まで市街地からいくつかのルートがある。いずれも両脇に樹木が立ち並ぶ林道をくねくねと登り十五分ほどで集落に着く。人々にとって林道は通院や通学、生活用品の買い物といった市街地とのつながりの道である。不便な、と言えば不便なのだろうが、わたしはこの道の入り口にさしかかるたびに、これから出会えるであろうものたちを想像し、わくわくするのだった。
四季それぞれに美しい棚田の風景、清清しい朝の気高さ、ゆったりと流れる雲の動き、稲穂をゆらす風のたおやかさ、音を立てて絶えず山から流れる水の清らかさ。谷相を伝えるには、いったいどれだけの言葉が必要なのだろう。そしてここに暮らし器をつくる小野哲平さんと家族、そこに集う人々と過ごす時間の密度の濃さも。どれだけの言葉を費やしたら伝えられるのだろう。
これがムービーにしたいと思った正直な動機である。
取材は二○○五年秋から二○○六年秋にかけて行なわれた。高知を訪れる度に工房に寝泊りさせてもらい、窯焚き、窯出しの場に立ちあうことができた。カメラマンの工藤晶彦は、その様子をムービーカメラで撮り続けた。そのアプローチは非常に明快なものだった。撮影において、彼は何事にも注文をつけることをしなかった。大掛かりな撮影装置は一切持ち込まず、カメラ一台自分の体ひとつで、その場に立ち会い記録することに徹していた。
そして私と言えば、昼夜を問わず話を聞いた。問いの答えがうまく得られなかった時には次の日に持ち越してインタビューを続けた。辛抱強く哲平さんはつきあってくれたが、時には自分の言葉に正直であろうとするあまり、言葉につまり、長く沈黙が続いたこともある。自分が何のために器を作るのか、その答えを、自らの中の鉱脈を深く掘り下げて、やっと言葉を見つけたような瞬間もあった。
インタビューに答える彼の姿は、器を作る時の真剣さそのものであったと思う。文章をまとめるにあたり、その間合いや、空気をなるべくそのまま伝えることを目指した。

谷相にはかつて城があり、その時代から受け継がれた人々の暮らしの痕跡が今も見られる。集落に点在する小さな社や地蔵は大切に扱われ、年間を通じて行なわれる祭事は人々が自然を敬い土や火や水という神とともに暮らしていることをしめている。
それにしてもこの地にあるものは何だろう。その見えないものにつき動かされてこの本は生まれたのではないか、とわたしは今思っている。
なぜこのDVDブックは生まれたのか。映像とブックを重ね見ていただき、その答えが見つかることを願っている。


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高知県立牧野植物園で行う「土から生まれるもの」では、牧野富太郎記念館和室にて「土から生まれるもの 小野哲平展」を行ないます。

牧野植物園での器の展覧会は初めて行われるものです。
薪窯を中心にした作品展では、碗、鉢、皿、そして存在感のある壺など、暮らしに根ざした器たちをご覧いただきます。

和室という空間で、膝をついて座り、それぞれの器を手の中に入れて包み、「土」というもの、「火」というもの、人の「手」というものを、それぞれの「声」や「ことば」を聴くように、感じていたただければと思います。


そして、映像ホールでは、、「土」をテーマに、本編では未収録の小野哲平さんと早川ユミさんのインタビューを中心に再編集した「特別編 土から生まれるもの。」の上映会を行います。
この特別編では、工房の前、稲刈りを終えた棚田の風景を背中に彼らは言葉を選んで語ります。
その言葉や映像から、わたしたち現代人が忘れてしまいがちな「土とつながって生きる」ということを感じていただければと思います。



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●10月21日は高知ガイアデー

「土から生まれるもの デイジュリドゥ KNOBコンサート」と龍村仁監督『地球交響曲第一番』の上映があります。

●『地球交響曲第一番』 
出演 野澤重雄(植物学者)/ラインホルト・メスナー(登山家)
ダフニー・シェルドラック(動物保護活動家)/エンヤ〔ミュージシャン)
ラッセル・シュワイカート(元宇宙飛行士)
会場 高知県立自由民権記念館 
上映時間 ?10:00-12:15 ?13:30-15:45 ?18:00-20:15
チケット前売 1200円 当日1500円

くわしくは、http://kochi-project-gaia.blogspot.com 


●KNOB 土から生まれるもの ディジュリドゥコンサート

会場  牧野富太郎記念館 展示館 階段広場 
開場16時  開演16時30分  終演17時30分 
〔当日17時をすぎての入園はできませんのでご注意ください〕
前売1600円(税込) 当日1800円(税込) 全席自由

■入場には別途植物園入園料がかかります[一般 500円(高校生以下無料)、団体(20名以上)400円]

協力 高知ガイアプロジェクト 担当・野崎 TEL 090−1177−5466 
   Eメール alohamanahealing@ybb.ne.jp


*映画とコンサートの チケット取り扱い:
高新プレイガイド TEL:088-825-4335
高知県立美術館ミュージアムショップ  TEL:088-866-8118

Aloha mana   高知市北高見町97   TEL:090-1177-5466(野崎)
ヒーリングアーツ 高知市一宮西町1丁目7-15-1F  TEL:088-845-2827
ゆったりらいむ高須   高知市葛島4丁目7-20 1-C TEL:088-885-4315
Natural cafe Sasa's Lohas  高知市朝倉東町2−1 TEL:088−828−4477


「土から生まれるもの イベント当日は、大変混雑が見込まれています。駐車場には限りがありますので、公共の乗り物をお使いください。皆様のご協力をお願いします。

「土から生まれるもの」についてくわしくは、

うつわ祥見のホームページ  http://utsuwa-shoken.com をご覧ください。