情熱を持って仕事をする
「こどものうつわ展」が終り、この数日、いくつかの原稿を書いたり、展覧会の打ち合わせ、DMの制作の仕事をして過ごしています。
三連休のうちは「今日はやっていますか」とお電話をいただきましたが、「申し訳ありません、9日に展覧会が終ったばかりで、次回は3月6日より13日まで小山乃文彦さんの個展を開きます」とお伝えしました。
そんな一日に、ある方から葉書が届いて、そこに
「セツローのものつくり」素晴らしい本でした。祥見さんは情熱を持って仕事をされる人だと、改めて思いました。
と書いてありました。
この「情熱を持って仕事をする」という表現が、なかなか・・・嬉しいものです。
本づくりは、まさに「情熱」というのにふさわしい仕事です。
そして、今回は、セツローさんというものづくりびとの仕事のうち、二度目に倒れられ現在はもう制作をされなくなった「木の匙」「土人形」を、どうにかして「作品集」という本の中に収め、ひとりでも多くの方に、セツローさんのお仕事の素晴らしさを伝えたい一心で本づくりをしてきました。
ページをめくると、思い起こすのは、
2006年の12月に行った「小野セツロー手の仕事展」の際、セツローさんからお電話をいただいて「祥見さん、もうこれで最後です。最後の土人形です」と言われたこと・・・そして届いた包みから出てきた「申」「午」「丑」「猫の雛人形」たち。
包みから出てきたこれらの愛らしい作品を前に、なんとも言えない気持ちになりました。それは複雑で簡単に言葉にできない気持ちです。黙って作品たちと向き合っている時間、辛く、悲しく、それはもう、なんとも形容しがたたい気持ちでした。
「申」の愛嬌いっぱいのとぼけた表情、「猫の雛人形」の小道具にいたるまでの洒落っ気。
愛らしくてせつなくて・・・『セツローさん』の帯に書いた言葉そのものの、素晴らしい作品が、そのとき、私の手のひらの中にありました。
この 素朴な土人形を、セツローさんがどうやって作っていらしたのか・・・私は仕事場を訪ねて、よく知っていました。
「もう、これで最後じゃよ」と言われたセツローさん。
「これを売ってしまってよいのですか」
「いいよ」
「ほんとうに?」
「いいよ」
そんな会話を、セツローさんと何度か繰り返し・・・展覧会は始まったのです。
展覧会では、土人形はとても人気で、すぐにどの作品も「行き先」が決まりました。
そんな皆さんにお願いして、展覧会最終日まで お預かりさせていただくことにしました。
展覧会を訪ねてくだった方に、最終日まで この作品を見てほしいという思いと、もう一つ、私には考えていたことがありました。
それが、すべての作品の写真を撮ること。目の前にあるセツローさんの作品を、いずれ作品集に収めるための写真を撮ることでした。
今回、アノニマ・スタジオから出版した『セツローのものつくり』の印刷立会いを昨年暮れに行っていたとき、ふいに、なんだか、急に、あの時、セツローさんの作品を残したい・・・と願った、あの当時の自分の気持ちを思い出して・・しみじみと良かったと・・そう思いました。
あの日、窓辺で 一つひとつの土人形たちをカメラのファインダーで覗いて、シャッターを切っていたことを、今も時々、とてもリアルに思い出すことがあります。
今回葉書に書いてくださったように、あの時の気持ちは「情熱」のほかの言葉を当てはめることはできないかもしれません。
小野セツローさんの初めての作品集 『セツローのものつくり』
定価2310円(税込)
96ページ B5判変型
出版を記念して展覧会が行われます。
【『セツローのものつくり』出版記念展】 ←ただいま行っています。
1月25日(金)〜2月14日(木)
reading finerefine
ファインリファイン内書籍コーナー
tel.03-3569-7261
10:30〜19:30(木・金・土 〜20:00)
2月19日(火)〜25日(月)
「セツローのものつくり展」
恵文社一乗寺店 ギャラリーアンフェール
tel.075-711-5919
10:00〜22:00
http://www.keibunsha-books.com/gallery_enfer/index.html
3月1日(土)〜8日(土)
「セツローのものつくり展」
馬喰町ART+EAT
東京都千代田区東神田1-2-11 アガタ竹澤ビル202
tel.03-6413-8049
11:00〜19:00 会期中2日(日)曜定休
http://www.art-eat.com/main.html
3月1日(土)〜8日(土)
東京都台東区蔵前2-14-14 1Fガレージ
tel.03-6699-1064
11:00〜18:00 日曜定休