TOMOO SHOKEN

うつわとともに 祥見知生

奈良と京都へ

鎌倉は曇り空の、湿度の高い日となりました。

奈良・京都から帰ってきました。

二日間で尾形アツシさん、吉岡萬理さん、村田森さんの工房を訪ねてきました。

尾形さんは瀬戸から奈良の山里に工房を構え、薪窯を作られようとしています。



大きな栗の木が目の前にある、静かな場所です。ちょぅどお天気もよくて、昼食には笹の葉寿司と、焼き鯖寿司を、お庭を見ながら食べました。

取れたての若竹が入った味噌汁がとても美味しかった。
お膳に並べられた器は、ご自身のものです。

その作り手自身がふだん使っている器を拝見することも、工房を訪ねる楽しみの一つです。尾形さんと、しばし、うつわ談義。器のことばかり、ずっと話を日が暮れそうになり、あわててロクロや、化粧掛けなどのお仕事の様子を撮影しました。

尾形さんは雑誌編集者から陶芸の世界に入られた方です。

自分を飾り立てず、いつも、自然に、本質へ向かっています。今回の取材でも、そのことを感じることができました。

夕方、尾形さんのお子さんを保育園へ迎いに行き、そのまま、吉岡萬理さんの工房へ。

ちょうど萬理さんは20日からの高知での展覧会のための、最後の窯詰めの最中で、大変お忙しい中でしたが、快く迎えてくださいました。

今年は12月に、萬理さんと一緒に、「カルロス君展」を大阪のにitohenで行うのです。

カルロス君とは、土を耕す農夫。土から離れて生きて失ったものを、気付いてほしい、という萬理さんの思いから生まれ色絵の器に描かれた人物(キャラクターと言っていいのかな?)です。

萬理さんとは、いつも会うと、大きな声で笑いあいながら、器について真剣な話をします。

わたしが時々、器を伝えることは、大きな海にちっちゃな小石を投げているような気分になります、と言うと、萬理さんは、「ぼくもね、どうやって若い人に、器の大切さ、食べることの大切さを伝えるか・・・ぼくが何か言っても誰やねん・・ですからね、もう、浜崎あゆみに アユ最近、器のことが気になるぅとか言ってもらう゛浜崎あゆみ作戦゛しかないんかな・・・と思うんですよ」。こんな感じです。

傍から見たら、この二人は何を真剣に話しているんやろ・・・と思われるかもしれませんが、二人は大真面目で、器をいかに伝えていくのかの話で盛り上がるのです。

萬理さんの工房は、初瀬川の川沿いにあります。こちらも大変静かで自然が美しい場所。
工房を後にするとき、蛍が顔を出してくれました。
「ショウケンサン、今日からですよ、こんなに蛍が出てきたのは!!」萬理さんが子供だった頃は、比べようがないほどの蛍が、この川には見られたそうですが、年々数が減ってきているとのこと。

それにしても、暗闇に光る姿の、美しいこと。幻想的な蛍の光に、ただただ感動です。

見つめていると、何か、不思議な気持ちになりますね。
小さな蛍。この光に勝る光を、わたしたちは作り出したでしょうか。人間が作り出すものの、薄っぺらさ、というのかな・・・・自然にはかなわないな・・・と改めて思います。人がもっと謙虚であるべきなことを、蛍の光を見ていて感じましたし、それと同時に、「人ももっと、あるがままでいいんだ」という気持ちになりました。

萬理さんと夜食事をして、終電で京都へ。

翌日は、村田森さんの工房で、ロクロの撮影をし、鎌倉へ戻りました。

忙しく飛びまわって体は疲れているかもしれませんが、気持ちが充実しているので、さほど疲れは感じていません。

それよりも、旅はいいなぁ・・・と実感するほうが大きいのです。

今回も 京都から近鉄線に乗り、田園風景を眺めながら電車に揺られていると、気持ちがだんだん穏やかになってくるのを感じました。

こうして、旅をして、作り手の方を訪ね、わたしは、皆さんとそれぞれ話をします。
彼らが何を思い、何に突き動かされ、器を作っているのか。
わたしは全身で感じ、ことばにします。

新しい器の本は、河出書房新社より10月中旬 出版予定です。

うつわ祥見の次回展覧会は、巳亦敬一硝子の器展です。


巳亦敬一 硝子の器展
2008年6月26日(木)〜7月4日(金)
11:00から17:00 会期中無休

あたたかさが手から伝わる硝子の器。
札幌で硝子の器づくりをされる巳亦さんの器には、
不思議な魅力があります。
まいにち、手に包む、日々の硝子。
小鉢、グラス、皿・・・。
心地よさとうれしさを連れてくる硝子の器たちを
どうぞ、ご覧ください。