小屋展から
秋風が吹いています。
夕方、テーブルランプの灯りだけで、テーブルの上の小屋たちを眺めています。
今日は小屋の「光と影の話」をします。
たとえば皆さんは部屋にいて、定点観測をするように、何かモノの光と影について注意深く感じることがあるでしょうか。
ふだん気にもとめない、モノの光と影。
モノの存在というのは、光と影によって出来ていると言ってもいいのですね。光があるからそのモノを、わたしたちは認識できるとも言えるかもしれません。
光が反射してもののかたちが「見える」のですが、当たり前すぎてわたしたちは普段そのことを忘れているのではないでしょうか。
小屋は、その、光をとらえます。
小屋そのものも光を受け止め、影をつくります。そして小屋の中を覗くと、光が常に入り込んで小屋のなかに影と光を作り出します。
朝の光、昼の光、夕方の光。
小屋はそれぞれに違う顔を見せてくれるのです。違う「光」を感じさせてくれるのです。
光と影は「時間」という目に見えないものを見せてくれるものなんですね。
古びたトタン壁の姿をした静かな小屋たちは、時間を受け止め、そして「時間」を伝えるものなのだと思います。
ちょっとした「発見」です。
でも、こういうこころのときめきが、ときには必要なんだと思います。
今回の展覧会では、近づいて小屋を見、そして遠く離れてもう一度見て、また近づいて見る・・・というように、
距離を近づいたり離れたりして小屋をご覧になる方が多いのです。
わたしも一緒に近づいたり、離れたりして、小屋を見ています。
すると、こころのなかに生まれてくるものが、確かに感じられるのです。
それは、明日になればきっと近づいていける希望のようなもの。
そういうことを、感じさせてくれる作品なんですね。
矢尾板克則小屋展は9月10日まで。会期中は無休です。
どうぞお出かけください。