一緒にごはんを
こんばんわ。
石田誠さんと美味しい「牡蠣フライ」を食べて帰ってきたところです。
ご一緒したのは 旧大船撮影所近くにある海鮮料理の食堂です。
「ほぼ日」の「わたしの本棚」コーナーで紹介した前田秀樹さんの『倫理という力』のなかで「美味しいとんかつを揚げるとんかつ屋の主人」の仕事ぶりを紹介する記述にひどく「反応」した私でしたが、実は・・私にとっても、「ああ、プロの仕事だ」と毎回感じさせてくれる食堂の主人が身近にいるのです。
ここのところは、牡蠣のシーズンに入り、絶妙の美味しさの「牡蠣フライ」と、いつ頼んでも裏切らない新鮮なお刺身を食べに鎌倉を訪れた方をお連れしています。
最近は「器と道具展」の打ち上げも、364のお二人とご一緒したのでした。
誠さんも「うまいですねぇ」と満足されたご様子。そういえば、この食堂には、森さん、村木さん、尾形さんも・・・萬理さんも・・・・とにかく皆さんをお連れしているのです。
大船撮影所の近くということもあり、店内には、山田洋次監督のサインが飾ってあったりします。
でもここのご主人やお店の方も対応も、本当に好きです。
べたべたすることが一切ないので、気持ちがいいのです。
客への一番の接待は「味」であることを知っていらっしゃる。
その姿勢が見事に伝わってきます。
さて、誠さんとの食事の間も、話は尽きませんでした。
世間話などは一切なく、器の話、展覧会の話、「ストレートに伝えること」とは何ぞやという話で盛り上がりました。地元の人が集う食堂で、なかなか内容の濃い話でした。
わたしは作り手と話すこと、一緒にごはんを食べることが、器を伝える仕事をするうえで何より大切と考えています。
作り手の皆さんとできるだけ一緒にごはんを食べて とにかく「話す」のです。
先日もNEARの近くで村上躍さんと一緒に食事をしました。
一緒に食事をするということが、「やっぱり何よりも大切」と躍さんとご一緒の、そのときにも「ふっと」感じる瞬間があったんですね。
それは、こう・・感覚的なもので、論理的にどう大切なのかを説明しろと言われたら困ることなのですが。
でも、思うのは、「食べる」ということが、きっと一番動物的で、カッコつけられなくて、飾りようもないことなんじゃないかなということですね。
わたしがお酒をさほど呑めないせいもあるでしょうけれど、コミュニケーションをとるのは、お酒を酌み交わすのではなく、ごはんを食べることなのです。
少し大げさに言うと、わたしは器の作り手の仕事を「惚れ込んで」伝えたいと思っているのでしょうね。
器を伝えることは、人間臭さも含めて、その人の魅力を伝えたい、ということに他ならないのだと思います。
誠さんの在廊日の今日、誠さんの仕事に惚れ込んだ皆さんが訪れました。
長い時間をかけて、器を選び、手に包まれていきました。
その様子を見ていて幸福な一日でした。
単純でいいのです。そのことが、展覧会を開く力につながっていきます。
家に帰ると、オレンジスパイスのHさんから今日もメールが届いていました。
ここ数日 有田や唐津で器を作る若手の方も多くいらして
「こんな場所を作ってもらったことが
ありがたい」と皆さん感動されていました。
私たちも 普段聞くことがない話を聞かせていただき
毎日が楽しいです。
とあり、本当に嬉しく思いました。
長崎での「ごはんのうつわ展」は23日祝日までです。多くの出会いが生まれますように。
そのHさんへの返信のメールにも書いたのですが、
わたしは、いつも「器のほんとうとは何か」を考えています。
こんなに器のことを考えている人間がいるだろうか・・・と思うほど(笑) の「おせっかい」さなのです。
この「おせっかい」ぶりは、本当に「業」のようなもので、どうしょうもなく止められない「おせっかいぷり」です。
「おせっかい」は「情熱」と言えばきれいですが、でもいずれにしても、伝えたいという気持ちに嘘はないのです。
今日は、新刊の本の「再校正」を戻しました。これであとは印刷、製本と・・・最後の仕上げとなり、もう著者である私の手を離れたことになります。
夏から秋にかけ、展覧会が目まぐるしく続いた今年でしたが、編集者やデザイナーの皆さんのお陰で、なんとか、一冊の本を作ることができました。
『器、この、名もなきもの』 里文出版 本の発売日は12月12日に決まりました。
「楽しみにしています」と声をかけてくださる皆さんに、感謝しています。
展覧会でお目にかかる皆さんに、そう声をかけていただくたびに、どんなに励まされたことでしょう。
本当に有難うございます。
皆さんのもとへ届けられる日はどきどきしますが、また一緒に本についてもお話ができたらいいな、この本からまた器と出合う方がいらしたら嬉しいな・・と思っています。
うつわ祥見「石田誠 陶展」は 11月27日(金)まで。 会期中は無休です。
ぜひ、お出かけください。