TOMOO SHOKEN

うつわとともに 祥見知生

 石田誠陶展が始まりました

うつわ祥見では「石田誠 陶展」が始まりました。

今年も、この展覧会を楽しみに待っていてくださった方がたくさんいらっしゃると思います。

わたしもその一人です。

最後の最後まで、南蛮焼き締めの窯を焚くかどうか、をやりとりしてきました。

必ず、うつわ祥見の展覧会に、久しぶりの南蛮を焼いてほしいと、
わたしは誠さんに言い続けてきましたし、彼も「はい、承知です」と言ってくれていたのですが、

夏くらいを過ぎて、少しスケジュールが見えなくなってきたかな・・と思った頃に、
思いました。

これは待つしかないと。

ギャラリーは、器を伝える人間は、作り手の「いま、作りたいもの」を伝えるべきなんです。

だから、石田誠という作り手が、「いま」この時期に、彼自身の何もかもを含めて 取り組む仕事を、
「待つ」ことにしたのです。

夏が過ぎたころ「やっぱり今回は・・」と誠さんは言うのだろう、と思いましたが、そんなことはなかったのです。

彼もぎりぎりまで南蛮焼き締めの窯に火を入れるつもりで取り組んでいたのです。

しかし、わたしはその頃になると、プレッシャーをかけるような言葉を伝えることを差し控えました。

作りたいものを、自由に、作ってくれたらいい、 そう思うようになりました。

そして、本当につい最近ですよね

新作でうつわ祥見の展覧会は行きたいのだ、と連絡が入ったのは。

それが今回、取り組まれた 南蛮の土に釉薬を使った「スリップウエアー」です。

わたしも正直、心配でした。

どんな焼きになるのか、ご本人も不安を口にしていましたから。

「窯が出たら、まっさきに連絡します」

「待っています」

と松山と鎌倉の、誠さんと私のことですからそれは明るいやりとりでしたが、
しかし実際には緊迫した(たしかに緊迫としていました)やりとりが続きました。

そして、窯だしの日。

こういうときは、工房へ 電話をするのが 本当に怖いものです。

第一声で、窯だしした器の出来不出来がわかりますからね。

でも大丈夫でした。

石田誠さんの声は朗らかに弾んでいました。

「なかなかええものができました」と。

本当に安堵しました。

「写真、メールで送りましょうか」と誠さんがいつになくハイテクなことを言われたのは、
わたしがまだ不安に思っていることを察してのことだったのでしょうか。

送られてきた写真は、スリップウエアーとデルフトの写真でしたが、
実はその写真を送ってくださったことで、わたしはかえって不安になってしまったのです。

なぜなら、フラッシュをたいて夜に撮ったであろう写真で見る新作の器たちに あまり良い印象を持たなかったからです。

「写真 拝見しました」わたしはとてもそっけない文章でメール拝受のお返事をしたように思います。

そして、搬入の昨日、いよいよ器が届きました。

荷物から出てきた器たちの、なんと素晴らしいことでしょう。

ひと通り器がでると、松山へ連絡をしました。

「素晴らしいじゃないですか」「いいです、いいです。素晴らしい」

「よかったよかったぁ」。誠さんの声は、テープにとって録音し、着信音にしたいくらい明るい声でした。

ということで、

初日を迎えた「石田誠陶展」です。

わたしはこれまで、展覧会で出展された器を会期が終わるまでは 
決して自分のものにしない、という鉄則を守ってきましたが、

今回はその掟を破るかもしれません。初日が終わったら一枚を選びたいと思っています。
(今回の石田さんのこの仕事を、きちんと一枚、記憶のなかだけではなく、取っておきたいと思います)

写真をご紹介しますが、ぜひ実物をご覧ください。

なんいっても、この器たちの魅力は、実物を見なくては伝わらないと思います。

「メキシコなのか、民芸なのか、ようわからんものができたけど、ええものができた」

2010年11月。石田誠さんの取り組まれた新作の器への彼自身の言葉です。

明日は石田さんが鎌倉へいらっしゃいます。

ぜひお出かけください。