TOMOO SHOKEN

うつわとともに 祥見知生

うつわびと・小野哲平

こんばんわ。

明日初日を迎える 小野哲平さんのカイカイキキギャラリーの展覧会の搬入に 朝から行って、いま、鎌倉へ戻ってきました。

1000点を超える作品たち。

午前中にカイカイキキギャラリーへお邪魔すると、圧倒的な数の器たちが足の踏み場もないくらいに置かれていました。

この二年の間に8回の薪窯焼成され、「生まれてきた」器たち。

一つひとつにじっくりと時間をかけて見ることはさすがに許されない状況でしたが、器の一つひとつから発せられる、圧倒的な力をひしひしと感じました。それは、まぎれもなく、土から生まれた厳しい仕事でした。

展示は、畳敷きの空間とコンクリートの空間が二つあり、畳敷きには器を、そしてコンクリには壷が置かれました。

器をどのように「見せるのか」「展示するのか」。

わたしなりに考えることを率直に述べて、一緒に展示を作りあげる手伝いを行いました。

哲平さん自身はいつも、展示に関しては ギャラリーに任せて、初日にその内容を確認し、何か直す点があれば直すというやり方をされているので、今回のように、展示そのものを自分で作り上げることは大変珍しいことですし、それだけこの展覧会にかける思いが大きいのだと感じます。

桃居の広瀬さん、哲平さん、ユミさんらと食事をして鎌倉へ帰ってきて、いま、思うことは、

この展覧会のために 成し遂げた土の仕事が、明日の初日を迎え、多くの方の手に器が手渡っていく・・そのことが本当に素晴らしいなぁということに尽きます。

わたしの周囲でも、最近、村上隆さんという現代美術家のもとで、哲平さんが展覧会を行うことに対して、さまざまな反応がきかれました。

村上さんお得意の、言葉の使い方について、わたし自身も、愛する器を愚弄されたような怒りを感じることがありました。(そのことは今日、もちろん、村上さんに はっきりと伝えてきました)

村上さん自身が、この展覧会のために書いた「なぜ小野哲平展を行うのか」という文章を読んでも、わたしには、ピントがずれているようにしか思えませんし、何よりも、「現代生活陶芸」という言葉がどうしても相容れないものを感じます。

先の村上さんの文中には、青木亮さん村木雄児さんの名前にも触れて、哲平さんを含むそれら3人が「現代生活陶芸」というジャンルで器を作っている、と書くのですが、

ということは、わたしが伝えている器たちが、「現代生活陶芸」? と首を傾げたくなります。

その言葉を正すために、わたしはもっと明確に、器たちを伝えていかなくてはならないと考えます。

このことはまた改めてと思いますが、

何よりも今日のうちに伝えたいのは、

小野哲平といううつわびとが、身体をぎりぎりまで使って作り出した1000点という器たちが本当に素晴らしいということ。その仕事へ向かわせた今回の展覧会・・
めし碗、皿、小皿、湯のみ、そば猪口、ポット、鉢、そして大壷・・・

わたしが村上さんに感謝しているのは、その一点に尽きます。

いまや村上さんが何を考えこの展覧会を開くに至ったかは問題ではありません。

これらの器たちは、もうすでに「土から生まれ」、「モノ」としての圧倒的な存在がそこにある、ということ。

多くの人の手に渡っていくということ。そのことが素晴らしいのです。

柳宗悦が初めて李朝の器に出会って感動したのと同じように感動しました」。

村上さんが、この器たちを目の前にして、わたしに正座して 言われた言葉です。

現代美術の文脈で、彼がどんな言葉で器を語ろうと、器自身は揺るがない強さとなんでもなさと、美しさを持っていることを、わたしは今日はっきりと感じました。

そして、わたしたち器を愛する人たちだけが 共感したり、感じあったりできることを、より大切にしていきたいと思います。

器とともに暮す、かけがえのない日々。その愛しい時間は、誰のものでもなく、わたしたち自身のものであること。

手に包み、愛する器とともに過ごす時間はほかのどんな価値にも置き換えることができない尊いものであること。

そして、小野哲平さんという「うつわびと」の仕事への向き合い方は、わたしたち「使う人の手」を決して裏切らないということを感じます。

哲平さんが今回の展覧会に向けて 書いた言葉を紹介します。



現代土人陶芸

縄文のころの自分も、
そして今の生をまっとうして次の自分も、その次も
ずっと土をさわって いた。 いたい。 
そんな血のなかにある感情の積み重ねで
今の自分が存在していると思います。
景気が良くても悪くても 
ずっと、土着で土人のような仕事を続けて
土着生活陶芸 もしくは 現代土人陶芸なんです。 
そして、だいじなことは 過去の自分に起きた実感 
芸術が自分の闇に光を放ってくれたこと
そのことを信じて 勇気をもって 作り 
光を放ちたいのです。

小野哲平



今日、搬入に朝から立会い、器たちの姿を見ることができて 本当に良かった。

土着で土人。これから私達が行く道を照らす「土とともに生きる」ことを、哲平さんの器たちが伝えています。


村上さん自身が この「土の器」というものに 激しく反応されたということなのでしょう。

手に包む土、そして、しみじみと繰り返される暮らし。生きることを支える器。


何かと注目されている展覧会なので、明日の初日は訪れる皆さんで混雑が予想されますが、

どうか心を沈めて、静かな気持で、器を手に包み、これらの器の生まれてきた道を感じていただきたいと思います。

明日3日と4日は、哲平さんが在廊されます。

畳みの上で、ゆっくりと、座りながら、ぜひ話をされてください。

器をご覧になられた、率直な言葉を、器そのものへの言葉を、哲平さんは一番待っていると思います。

展示の様子を撮った携帯電話を忘れてしまい、撮影した会場写真をUPして紹介できないことが残念です。

カイカイキキギャラリーのホームページにて 出展の器について UPされています。ご覧になってください。

"小野哲平 陶展
〜心の闇で、光を放つ〜"
2010年12月03日 – 2010年12月16日

*会期中、日曜日は開廊 月曜日休

http://gallery-kaikaikiki.com/



そして、うつわ祥見では 12月はふたつの展覧会があります。ぜひお出かけください。

矢澤寛彰さんの漆の展覧会は、昨年に引き続いて2度目の展覧会です。

○ onariNEAR 12月3日〜12月28日 矢澤寛彰 漆のうつわ展  

○ うつわ祥見 12月10日〜12月16日 深田容子 冬支度のうつわ展

くわしくは、うつわ祥見のホームページをご覧ください。