TOMOO SHOKEN

うつわとともに 祥見知生

高知にて

皆様 こんばんわ。

わたしは今、高知のセブンディズホテルプラスの一室で、この文章を書き始めています。

昨年10月に始まった、高知県立牧野植物園「樹と言葉展」(shoken.inc 高知県牧野財団共催)が、本日2月13日に閉幕しました。

最終日、どんな感慨が生まれるだろうか、と想像していました。

会場内の「樹と言葉」を、静かな気持ちで、歩きました。

大貫さん、いしいさん、細野さんの言葉を改めて読みました。

第一会場の「言葉の森」を自由に歩き、展示している本の背表紙を眺め、そして木のテーブルに置いた木の絵本を手に取りました。

そして第二会場の、この展覧会のために松浦弥太郎さんが書いた「少年と樹のものがたり」をもう一度ゆっくりと読みました。

松林誠さんの「小屋」のなかに入り、壁に貼った「訪れた皆さんの言葉」を、その字のあたたかさ、言葉の強さ、優しさを、忘れないように、心のなかで反芻しながら眺めました。

心のなかに、小さな変化が訪れて、また、風が吹いて、何事もなかったように、穏やかに行き過ぎていきました。

鎌倉に住む私にとって、高知で行っている「樹と言葉展」は、会期中も、すぐに行きたくてもすぐに行けない場所、それは物理的にという意味なのですが、
毎日行きたくも行けない場所で・・行われている、大変大切な展覧会でした。

ですから、今日のこの最終日を迎えても、「終わる」という感覚が実はないのです。

行きたくもすぐには行けない場所で、ずっと永遠に行われているような、奇妙で甘美なイメージが、私のなかにはあるのです。

しかしながら、もしかしたら、心に残るとはそういう事を言うのかもしれません。

記憶の引き出しに確かに残るというのは、いつでも会える記憶装置のなかで、大事にしまわれている。

樹と言葉展は、その意味で、ずっと終わることなく、記憶のなかに刻まれたのでした。

会期中、遠方からも訪ねてくださった方々、多くの皆さんに、心より感謝申し上げます。

ありがとうございました。

皆さんの心のなかにも、「樹と言葉展」が刻まれていてくださったのなら、と思います。

そして、またいつのにか、「樹の言葉展」を訪れたことによって生まれたものが、小さな芽を出し、葉を広げる心の樹となってくれることを願っています。

開催にあたって、ご協力いただいた皆様にも、改めて感謝申しあげます。

本当にどうも有難うございました。



さて、高知では、花と器 SUMIで、「うつわハートフル展」が開催中です。

会期が一週間伸びて、2月22日までと延長となりました。

めし碗、皿、鉢、片口、湯のみ、ポットなど。日常使いの器たちが集いました。

そのどれもが、作り手の皆さんの「いま」を映しています。

写真で紹介しますね。

村木雄児さんの三島鉢です。

横山拓也さんの白化粧平鉢です。

村田森さんの染付け皿です。


唐津の竹花正広さんの刷毛目小皿です。

ほんの一部のご紹介ですが、どれも、本当に素晴らしい仕事です。

なんでもなくて美しい。

使う人の心にひたひたと響くような、素朴で土のあたたかさを感じられる器たち。


一見地味で、華やかさはそこにないかもしれません。

しかし、それでこそ、日々の器なのです。

使うたびに味わいを増し、育っていく、愛しい器たちです。

ぜひお出かけになり、実際に手に包んでご覧ください。

最後に、「うわさの」・・・
村田森さんの染付け大皿の柄は「紳士・淑女」の会食。
細かい描写も「ふふふ」と見入ってしまう快作です。

大きさは尺皿(30センチ)を超えているのではないかしら。

森さん、のびやかに、愉しく、やってくれましたね。

何度見ても飽きないので、見入ってしまいます。

ああ、器って、なんて自由でいいのだろう。

何か大義名分なんてなくていい。

自由でのびやかで、こんなにも心を弾ませることができるのだ、と思います。

今年夏の村田森さんの染付け展もますます楽しみになりました。