TOMOO SHOKEN

うつわとともに 祥見知生

松本 ・ 水の街

こんにちは。

今日も朝から暑いですね。

ニュースでも、連日、熱中症対策のことが話題になります。

時候の挨拶も「水分を忘れずに・・・」「熱中症には気をつけて・・」などの言葉が行き交っています。

盛夏の頃を迎える頃に息切れしないように、器も一緒に食卓だけでも、工夫をして、涼しく、暑さをやり過ごしたいものです。

さて、わたしはこの数日、信州の松本へ行ってきました。

松本までは、JRで行きます。湘南新宿ラインで鎌倉から新宿まで一本、そしてそこから中央線の新宿〜松本までの「あずさ号」に乗って。

この行き方が、本当によいのです。

あちこち乗り換えもありませんし、ホームからホームへ、本当に「スムーズ」。

ストレスゼロで、気がつくと、車窓には信州の青々とした空、光、樹木、山が・・・。

歳を重ねたせいかもしれませんね。

風景が心に染み入る・・ということが、本当にあるのですね。

敬愛する文章家の串田孫一さんはこよなく山を愛した方でした。串田さんの文章は、私の精神安定剤のようなもので、とても頼りにしているのですが、その串田さんが愛した山々を、自分はただ遠くから眺めているに過ぎないと知りながらも、心はさらに、落ち着き、呼吸が正しく整うような感があるのです。

ふぅー 深く呼吸をする、その喜びとでもいうものを、感じるのです。

いつものように、まえがきが長くなりました。

その松本、今回は一泊の小さな旅でしたが、とても有意義な出会いに恵まれた時間でした。


最初に訪れたのは、

イタリアンレストラン みたに。

作家のいしいしんじさんが「みたに」に行くだけでも価値がある・・とおっしゃっていました。
ふだん甘いものを苦手にしているいしいさんが「ここのアップルパイはせひ、食べたほうがいいよ」と。

昼間にたったひとりで予約して いただいてきました。

前菜からパスタ、自家製のパン、ご主人の三谷さんにお勧めいただいた「アラビアータ」も、そして、アップルパイも、すべてすべて美味しかったです。

窓から揺れている庭の樹木と、青い空と。存分に美味しいものを「さらり」といただいてきました。

この「さらり」がとても重要でね、「これでどうだ」という「ごちそう」ではないんです。

そこが、本当に、素晴らしかったです。

建築家の藤森昭信さんが「日本一のレストラン」とおっしゃっているそうですが、ふむふむ・・・あの路上研究の会の皆さんが絶賛していると聞けば、「なるほどなぁ・・」と まったくもって、共感いたしました。

三谷さんとは、民藝の池田さんのことや、松本に生まれ育った三谷さんにとっての松本とはどんな土地か、その厳しい仕事の根にある美しい眼差しはどこから生まれてくるのか(それを三谷さんは山がいつもそばにあること、とおっしゃっていました)、そんな話をゆっくりと伺いました。

私は、おっしゃっていることにすべて共感の気持で伺いました。

薄々感じていた松本の「正しさ」、背筋に一本入っている「伝統」というもの、 家具の椅子ひとつ見ても受け継がれていく「まともなこと」・・・色々な謎がとけていくように感じました。

うん、やっぱり、松本は奥深いなぁ・・と思います。

水脈。そんな言葉が浮かびました。

松本の街を歩くと、いたるところに、「井戸」があるのですが、この豊富な「湧き水」こそ、自然からの贈り物であり、人がまっとうに生きるための、背骨に栄養を与えている源のように感じました。

今回の旅で、感じたのは、空の青さと、水の流れ。

気温は35度と高めだったけれど、夕方にざぁーと夕立が降り、雨上がりの空気の美しさを感じました。

「ここにあって、ほかにないものは なんだと思う? 」

昼間、三谷さんに聞かれたのですが、本当に「ここにあって、ほかにないもの」という言葉が新鮮に響きました。

山と水、空気、人と人のつながり。

何もかもが、ここにはあるんですね。

大貫妙子さんが今回のチラシに書いてくださった言葉を ふいに 思い出しました。



深呼吸できる空気や

水と火と食料、家族と人の絆があれば

ほとんどのものは必要ないと

あらためて気づいた人も多いでしょう。

手始めにご飯を土鍋で炊いてみる

というようなことから

始めてはどうでしょう。

そういうことの出来る人が

これからは役に立つ時代がやってきます

大貫妙子


満ち足りた気持ちというのは、お金では決して買えないものですね。

松本の美しい空気と水の街で、響きあうものが、何か言葉を越えた世界へ連れていってくれるような・・・そんな予感がしてなりません。


さて、松本は、水の城下町。

市内を流れる女鳥羽川にかかる橋は、筋ごとに名前が付いています。開智橋、幸橋、鍛冶橋、中の橋、念来寺橋など。石つくりの歴史のある橋が補修を繰り返して、いまも残っているんですね。

橋を眺めていると、水が流れる場所の存在が圧倒的に大きく、清浄で尊く、脈々と受け継がれて来たものを感じ、いろんな事を考えさせられました。

旅で出会った印象的な場面で撮った写真です。


またこれから、8月の展覧会、記念ライブに向けて、私なりの松本を感じたままにご紹介していこうと思います。

ではいずれ近い日にまた・・・