吉岡萬理さんからのメッセージ 「諦めない」神様、シーサー君のこと
お正月も三が日か早くも過ぎていきました。
子供のころは、この三日の夜というのが苦手だったものです。
ハレの日が終わるのは、日常に戻っていくルールをきちんと受け入れ、
社会の秩序におとなしく従うようなイメージです。
もうお遊びはおしまい、と言われているようで、
不条理のように感じていたのでしょう。
ハレの日の煌びやかさはないけれど、
明日からも、ふつうの日のふつうの時間を、慈しみたいと思います。
さて、奈良で作陶する吉岡萬理さんの展覧会が
鎌倉・うつわ祥見onariNEARで1月9日より始まります。
展覧会に際し、葉書のスペースでは伝えきれない吉岡萬理さんの言葉を印刷し、
新年のご挨拶とともに、ご芳名を頂いた千人を超える皆様に御送りしました。
「シーサーの話」「精神の自由」「僕のシーサーの話」という三つの文章です。
吉岡萬理さんらしいユーモアに溢れた文章で、
ものつくりの精神から生まれる言葉の力強さに
ぐいぐい引き込まれていきます。
現実に憂い、漂う閉塞感に
俳優の伊勢谷祐介さんの言葉を引きながら、
諦めないという言葉を綴っていらして、とても勇気づけられました。
私はいつも素朴で美しい器を伝えたいと願っていますが、
ときには、こんなにカラフルな愛しいものも、
皆さんにおすすめしたいと思うのです。
なぜなら、ここには「希望」があるからです。
平和への願いを諦めず、光のある方向へ。
どんな表現でも、向かう場所はひとつのように思えてなりません。
萬理さんのシーサー君は「諦めない」神様 !なのです。
ぜひ、萬理さんの言葉をご一読ください。
【吉岡萬理さんからのメッセージ】
【シーサーの話】
今年は明るく使いやすい器の他に、シーサーが目を引くと思います。
シーサーと言えばわかりやすいからシーサーと言っていますが、猫に見えたら猫でもいいですし、怪獣に見えたら怪獣でもかまわないのです。僕からは「これは~です」とは言いません。見てくださった方が決めるのが一番です。
ここではシーサーと言うことにしますが、
もともとシーサーは、北アフリカや西アジアのライオン(獅子)だったそうです。
百獣の王ライオンは強さの象徴でした。
ライオンは、古代エジプトやギリシャでは王や神々の守り神だったそうです。
ピラミッドの前のスフィンクスもそれです。
そしてその強さの象徴ライオンがだんだん東に伝わり中国に入り、朝鮮半島から日本本島に入ったら狛犬に、沖縄に入ったらシーサーになったそうです。
それからシーサーや狛犬には「阿吽」の概念がありますが、飛鳥時代に日本に伝わった時は左右同じ形だったそうです。その後、平安時代になると左右に差異がうまれ獅子と狛犬の組み合わせになり、「阿吽」の形が出来たのもその頃からと言われています。
一応調べてみましたが、人に話されるときは自己責任でお願いします(笑)
ま~そんな事で、今では狛犬もシーサーも「守り神」で「阿吽」があってと皆さん思われていますが、僕のシーサーはもっと自由な神様です。守り神でも構いませんし、戒めの神様でも構いませんし、ただの人形でも構いません。また、「阿」であろうが「吽」であろうが何でも良いのです。
皆さんの思うがまま、考えるがままのシーサー像を作り上げてもらえたらそれが一番です。好きにシーサー!!
【精神の自由】
物作りには精神の自由が必要です。
宗教も精神の自由を得るために祈ります。本来、既成概念や欲望やあらゆる煩悩は無いほうが楽なんです。 「何にもとらわれない」それが「精神の自由」なんです。
五郎丸選手のルーティーンも精神の自由を得る為のものです。
普段の練習から一連のあのポーズをすることによって、試合でも練習と同じ精神状態でキックすることが出来るのです。「このキックを入れれば勝つ!!」「入れなければ負ける!!」と言った呪縛から解き放たれ精神の自由を得る事が出来ます。 だからどんな状況の中でも高い確率でキックを決める事が出来るのです。
きっと、座禅や写経やあらゆる祈りは、苦しみや煩悩から逃れる為の物だと思います。
物作りには精神の自由が必要ですが(必要と思った時点で自由ではなくのるので本当は全く何も考えない)、普段の生活もそういうちょっとした時間が必要なのかもしれません。
シーサー君を、人それぞれのイロイロな神様に仕立てあげてもらい、少しでも「精神の自由」を得るお手伝いが出来るなら、それは本当に嬉しい限りです。
【僕のシーサーの話】
僕にとってのシーサーは「諦めない」神様です。
実はここのところ世の中を諦めていました。
福島をはじめとする原発の問題、温暖化、貧困、テロ、その他イロイロひどい話や問題が山積みで、どう考えても明るい未来があるとは思えないからです。
そんな行き詰まった感が漂う世の中ですが、俳優の伊勢谷友介さんは諦めません。
彼が言うには、普通なら諦めるか、思考を停止するか、そんな問題を知らないかだそうです。 それが普通なのだそうです。 そして皆が普通にしているから世の中は変わりません。
世の中を変えるには、変わった人になれば良いのだそうです。
そう言えばいつの世も時代を変えてきた偉人は、最初は変人でした。
そしてその変人が多くなったら世の中が変わるのです。
僕は、超保守奈良県のそのまたド田舎に住んでいるからかもしれませんが、
ご近所さんから「あいつはちょっと変わっとるな~」と言われています。
またそんなご近所さんに地球温暖化の話なんかしたら「そんな先の話より今の話や」「やっぱりあいつは変わっとるな~」と言われてしまいます。
田舎が悪いと言っているのではありません。田舎には田舎の良さがあります。古いしきたりや伝統はこれまでの社会を維持するのに大いに役立ってきたと思います。
しかし、それは普通なのです。 明るい未来を作り上げるよりも、今を生き抜くのに必要な事、またはその方が楽なんです。
しかし、そんな世界観ではおそらく世の中は変わりません。 明るい未来を作るには普通でない変人が増えないとダメだと思うのです。 今までどうしたら良いのか判らなかったのですが、伊勢谷さんの言う事はなるほどです!!
変人を増やせば世の中変える事が出来るという事なんです!!
僕は、自分が世の中変えるような大した事が出来るとなんかこれっぽっちも思っていません。しかし、この話は諦めない理由付けにはなると思うのです。
これまで諦めていましたが、諦めない理由付けが出来たからには諦めずにいようと思うのです。
シーサー君にそれを誓ったのでした。
シーサー君を見るたびに「諦めない」でいようと思うのです。 吉岡萬理
1月9日に初日を迎える吉岡萬理展では、大小さまざま、
カラフルなシーサー君が鎌倉に登場いたします。
ぜひ、お出かけください。
吉岡萬理展
会期1月9日(土)~1月18日(月) 会期中休 1月13日(火)
営業時間 12:00〜18:00
作家在廊日 1月9日(土)1月10日(日) 1月11日(月・祝)
場所 うつわ祥見 onari NEAR
神奈川県鎌倉市御成町5-28 TEL:0467-81-3504
http://utsuwa-shoken.com/exhibition/detail_20160109yoshioka.html