TOMOO SHOKEN

うつわとともに 祥見知生

毎日使うものだから、誠実なものを。  

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阿南維也さんの鎬白磁皿は一目見て精巧さに唸った仕事でした。眺めているうちに清々しい気持ちになって使ってみたくなったのです。道具で均等に線の文様をつけていく鎬(しのぎ)は器に線を刻む線刻の技法大分県で作陶している阿南さんの器にはどれも実直な美しさがあり、好感がもてるのです。透明な釉薬の下に見える一本一本の線彫りのリズムに人柄を感じられます。この作り手はどんな人なのだろう。器を見て作り手を想像することは楽しいものです。

 

さて、阿南さんは子供のころ、図工と体育が得意な子だったそうです。なるほど。この文様の入り方は細かな作業が好きな人の手によるものだと感じていたので合点がいきました。

 

数年前のこと、鎌倉を訪ねてくださり、初めてお目にかかったとき、まっすぐに目を見てわたしの話を聞いておられました。きっと緊張なさっていたから余裕がなかったのかもしれませんが、そのさまには嘘がなく信用できる方だと思った記憶があります。

 

器は人。そう信じているので、ギャラリーで伝えたり展覧会にお声がけしたり、お付き合いさせていただくときには、その人の人となりを知ることがとても大切です。

阿南さんはいつも礼儀正しく嫌みがありません。ユーモアがあって話していると楽しく、時間を忘れるような親しさがあるので、友人にこういう人がいてくれたらいいなぁと思うほど。

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同様に、阿南さんの器も付き合っていて無理がなく、疲れることがないのです。料理でも盛るものを選ばないので、どんな場面にも登場する。碗のかたち、小皿の釉薬の美しさ、品が良く機能的なふたもの。どれもが潔く、まことに清々しい。まさに日々のための器です。

 

それにしても、阿南さんの人柄が滲み出る誠実な器は、わたしが遅ればせながら彼の仕事を知るようになったとほぼ時を同じくして、様々な場所でお見かけすることが多くなりました。やっぱり器は人なのでしょう。彼の誠実さはどんどんこれから世の中に広まっていくのだろう、と思います。そういう作り手に出会うことができたことに感謝しています。

 

うつわ祥見の常設展示では2月、阿南維也さんを特集いたします。遠くて行けないよ、という方には、WEBSHOPをご覧ください。さらに、東京青山のCIBONEでは、青白磁を中心に、阿南さんの美しい器に出会えます。

 

うつわ祥見 web shop

 

毎日手にすることで気持ちよさが持続する不思議な力を感じることがあります。それが日々の器の誠実さ、integrityということなのでしょう。

器のように、毎日使うものだから、誠実なものを。手にしたときに伝わる何かに耳を澄ませば、囚われていたことに心を騒がすことなく、日々が変わるかもしれません。