TOMOO SHOKEN

うつわとともに 祥見知生

春に・・・1

こんにちは。

西からやってきた雲が雨を降らせています。
春の雨に濡れる鎌倉、少しだけゆっくりとした朝を迎えました。

早朝のテーブルには昨夜遅くに飲んだお茶のポットがそのままにありました。最近は森岡由利子さんから頂いた加賀棒茶がお気に入りです。和歌山の工房を訪ねるといつもお土産にさりげなく何かをもたせてくださる、その優しさが大きくて、お茶を飲むたびに由利子さんのお人柄に包まれるように感じるのです。白磁のポットは常滑で作陶している田鶴濱守人さんの個展で求めたもの。たっぷりと大きく、たくさん湯量が入るので、お代わりを何べんも飲むのに重宝しています。昨年DEAN&DELUCAでの展覧会に初参加していただいた田鶴濱さんの個展を訪ね、ゆっくりとお話を伺いながら選び我が家に来てくれた器たちは、このポットをはじめ、すぐに馴染んで「うちの子」の顔になりました。
こうして何気なくお茶のことを書き綴ってみても、ひとつひとつ、身の回りにあるものには出会いの理由があり、ものといえどもすべてにご縁があるのだなぁと改めて思います。

さて、春は新しい出会いの季節と言われます。
振り返ってみたら後々、あの出会いが人生を変えたということもあるものです。
齢を重ねて思うのは、そういう出会いは作りだそうと思って生まれるものではなく、自然とそのようになった・・とでもいうのでしょうか、自ずと然る、自然(じねん)によって生み出されてくるものなのだ、という感覚です。友達もきっとそういうものですよね。知り合いになれても友達なんてなれない。出会って随分時間が経ちお互いに気が付いたら友達になっていた、というのが正解なのでしょう。時を経て熟成して実るものが真のつながりになれる。ただ直感というものは確かにあり、この人(このもの)とは長い付き合いになれそうだな、なれたらいいな、と感じる。その直感を大事にしていき、人やものとの出会いをおおらかに重ねていくことも、歳を重ね自分なりの「人生と呼ばれるもの」を熟成していく楽しさのひとつなのかもしれません。

2月には2年ぶりに長崎・諫早にあるORANGE SPICEで展覧会を行いました。平湯祐子さんをはじめとしてスタッフの皆様が作り出している温かな空間にうつわたちが並ぶ様子は、いつ訪れても心に残ります。うつわを心から大切に想い、伝えてくださる。人と人のつながりがあってはじめて、大事なうつわを預けることができるのです。これからもこのご縁を大切にさせていただきたいと思っています。

長崎の展覧会の度に必ずお出かけいただける皆様は、遠くの家族のように思えます。

ありがとうございます。

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 さてこの春、大切なご縁のつながりのなかで、様々なプロジェクトが始まっています。

3月、銀座・三越で行われた「うつわと暮らす展」。百貨店のリビングフロアで器展をするのは初めての試みで、美しくわかりやすく展示を整えるのに苦心しました。

会期中は、新しい生活に必要な器を選びにいらした方がお箸やクロスと一緒に器を選んで行かれたり、引き出物にされたり、百貨店ならではの出会いが生まれたようです。

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三越の包み紙は昭和25年、百貨店で初めてオリジナルの包装紙として誕生し、永く親しまれています。猪熊弦一郎画伯のデザインで当時三越の宣伝部にいたやなせたかしさんがロゴを入れたという伝説の包装紙。今回、子供の頃から慣れ親しんだその紙に包まれる器たちのことを想像しますと、なんだか急に頬が緩んで嬉しくなりました。
2週間の会期中は、担当者の方が驚くほど、器を求めて6階フロアに上がってくる方がいらっしゃったとのこと。お出かけいただいた皆様に心より感謝いたします。

 

静岡・三島のクレマチスの丘には、うつわ茶房KEYAKIがオープンいたしました。日本料理tessenの一階の空間です。オープン記念展として『うつわを愛する』出版記念展が開催されています。

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クレマチスの丘は、四季折々の花が咲く庭園とベルナール・ブッフェ美術館、ヴァンジ彫刻庭園美術館、写真美術館、3つの美術館とレストランなどを併せ持つ文化複合施設です。今年は開館15周年の記念の年を迎えられ、樹をテーマした展覧会が企画され話題を集めています。

https://www.clematis-no-oka.co.jp

クレマチスの丘を運営されている副館長の岡野晃子さんは、静岡の地で、うつわ文化をじっくり根付かせていきたいとおっしゃっています。このご縁を大事にし、うつわを手にしてくださる方との出会いを増やしていきたいと考えています。
三島は、JRで新幹線を利用すれば驚くほど身近な場所、一時間もあれば到着します。駅を降りてからクレマチスの丘までは無料のシャトルバスも運行しています。タクシーでも2000円程度です。
鎌倉からは大船乗り換えで伊豆の踊り子号が快適です。
一日ゆっくりと過ごしたい休日に、少し足を伸ばして訪ねて下さい。
空が高く広々とした素晴らしい景観が気持ちを晴れやかにしてくれます。

 

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『うつわを愛する』出版記念展
会期 2017年3月19日(日)〜5月30日(火)
場所 うつわ茶房KEYAKI  
〒411-0931
静岡県長泉町東野クレマチスの丘347-1

TEL(055)989-8787

 

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また、もう発表になっておりますが、クレマチスの丘で、8月13日に行われるキャンドルナイトコンサートに大貫妙子さんのライブが行われます。今回このライブをコーディネートさせていただきます。2010年に高知県立牧野植物園で企画・共催した「樹と言葉展」のために書かれた「名のない大樹」を含む樹にまつわる言葉の朗読とアコースティックなライブを予定しています。
「樹と言葉展」からのご縁で2013年より3年間、マネジメントを担当させていただいた大貫妙子さんとまた新しい場でご一緒できる機会が今後も増えていくような予感がしています。このご縁も大切に紡いでいきたいと思います。クレマチスの丘のキャンドルナイトコンサートお申し込み受付開始は、少しの先の6月10日(土)午前10時より。ぜひ皆様お越しください。

 

新しいお知らせはまだ続きます。

順番に書いておりましたら、一度では書ききれませんでした。

新しい本のことやこれから初日を迎える展覧会のこと、次の頁でお伝えしたいと思います。

雨の日も晴れの日も、出会い慈しみ、朗らかに。
人生をおおらかに過ごしたいものですね。

この日記を読んでくださる皆様にいつも感謝しています。

 

祥見知生