TOMOO SHOKEN

うつわとともに 祥見知生

うつわと一日

5月1日  新緑が美しい季節になりました。

今日の鎌倉は、午後に大気の状態が不安定になり 激しく雨が降りましたが、程なく上がり、爽やかな青空が戻りました。

先ほど、高知の友人から「季節の便りです」と 美しい新緑の写真が送られてきました。 空に向かって葉を広げる大樹の姿は、いかなる時も、心にしみます。 (物騒な世情のニュースが流れるたび、人間が繰り返す愚かさについて考えるにつれ、もっと空を見上げよう、植物たちを感じよう、と思いながら暮らしています。)

  

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『うつわと一日』が、出版社 港の人 から発売になりました。

 

港の人は、鎌倉の由比ヶ浜通りにある鎌倉の出版社です。 詩集・歌集を中心に良書を世に送り出しています。私は、かねてより、港の人のファンでした。港の人が中心となって開催されている本のフェス(とでもいうのでしょうか)、こだわりの本が集う「かまくらブックフェスタ」という催しは、本好きにはたまらないイベントです。 http://www.minatonohito.jp/kamakurabf/ 

かまくらブックフェスタに参加されている出版社はエクリや赤々舎、夏葉社など・・・。その名を聞けば・・・というこだわりの出版人が作る本が展示され、そのどれもが一目見て、活字や本への愛情が伝わってくるのです。


この数年は開催日程が遠方の展覧会スケジュールと重なり、行きたくても行けないジレンマが続いていたのですが、6回目を迎えられた昨年、やっと念願かない、伺うことができました。

志や良心と言われるものは、計量することは困難なのですが、感じることはできるものですね。 港の人のブースには、その日、嬉しくてたまらずに立っていた読者の私がおりました。

そしてその後、編集者の井上さんとゆっくりお目にかかる機会に恵まれ、昨年暮れから今回の本作りがスタートしました。

井上さんは私が2010年から始めたツイッターのすべてのつぶやきを読み、それらの言葉と格闘し、向き合い、一冊にまとめてくださいました。 大変ご苦労の多いお仕事だったと思います。

第1章は、140字の制約の中で、繰り返し伝えたいと願った、うつわの言葉が連なります。溢れ出るのが止められない言葉たちが次から次へと続きますが、改めて思いますのは、大海のなか小船で進んでいくような漕ぎ手が「希望」を失わずにいられたのは、この140字の向こうにこれらの言葉に耳を傾けていてくださった方々がいらしたお陰なのだということです。私は決して孤独ではなかった、のです。そのことに改めて感謝せずにはいられません。

第2章は2011年1月から4月まで、震災のあの日を挟む、日々のドキュメントになっています。 手に取り読み返しますと、後半に向かって、不思議な疾走感というのでしょうか、紛れもなくLIVEな時間がこの本の中に流れているのを感じます。 ここにあるものは、ある確かな生きた時間であること、もう二度と戻れないけれど、確かに存在した時間であること・・・この感覚をリアルに感じられるのは、この不思議な成り立ちの本ならでは・・・と思っています。

ちょうど現在、東京・国立新美術館地階SFTギャラリーにて「土から生まれる展」を開催しておりますが、当時、震災によって開催が延期になりながらも無事初日に迎えることができた「TABERU展」と同じケヤキの4メートルの一枚板が、うつわを支える(展示する)什器として使われていることにも、不思議な巡り合わせを感じています。

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港の人のブログにこの本の紹介が掲載されました。

素晴らしい編集者と出会い、生まれた一冊です。

新たにこうして一冊の本の形となったうつわの言葉が、遠くまで届きますように。

http://d.hatena.ne.jp/miasiro/