うつわ祥見KAMAKURA (小町) オープンによせて
うつわを伝える仕事をして嬉しいのは、食卓で使われているうつわの愛しさについて、みなさまから家のうつわの様子をお聞きすることです。
土のうつわの素朴なあたたかさ、優美なやわらかさと、清らかさ。
「うつわを感じる」とか「うつわに出合う」というのは、劇的な始まりの瞬間が突然訪れるようなドラマティックなことではなく、どこでもあるありふれた、食卓の光景のなかで積み重ねられていくものですね。
作り手から使い手へ、手から手へ伝わり、うつわは時とともに育っていきます。
もしかしたら、一番愛しいのは、うつわを使う「時間そのもの」かもしれません。
うつわを愛することは、かけがえのない日々の暮らしを愛することです。
鎌倉にもうひとつの空間をオープンにするにあたって、人の生きる時間のなかで、うつわが関わる役割について考えを深めていきたいと思っています。
生を受けてから、人生の時間をともに過ごし、そして最期のときを迎えるまで、うつわはいつも人のそばにあるものです。
「おめでとうから、さようならまで」、生きることを支える、うつわというものをこの場所から改めて伝えていきたいと願っています。小さな手に包まれる子供のめし碗も、愛する人を偲ぶ「蓋もの」も、うつわ祥見が伝えたいうつわそのものです。
ここでは、使われて育ったうつわの展示もしていきます。貫入がはいり、土肌がつややかになったうつわの頼もしい姿、金継ぎされてさらに美しさを増した直しのうつわも実際に手にとっていただけます。うつわは、ゆっくり手に包み、裏を返し、表情を楽しみ、お選びください。
今後は、鎌倉駅西口御成通りの「うつわ祥見onari NEAR」とともに、展覧会、常設展示を行ってまいります。ぜひ、鎌倉にお出かけの際には、御成と小町、ふたつの「うつわ祥見」へお立ち寄りください。心よりお待ちしています。
2017年12月13日 祥見知生