TOMOO SHOKEN

うつわとともに 祥見知生

『うつわを愛する』に寄せて 

 

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河出書房新社から『うつわを愛する』がまもなく刊行されます。

春から取り組んできた仕事です。

 

このタイトルは実は数年前にも編集者の方に提案したのですが、その時には採用されなったことがあります。でも今回は他に候補を挙げることなく、すんなりと決まりました。

おそらく、世間のうつわ熱というもの (うつわブームのような現象)が出版社の方々にも認知され始めたのかもしれませんね。

 

「本当にうつわのことが好きなんですね」と言われることがよくあります。

取材などでは「好きが高じて・・・」と紹介していただくことが多いのです。 

好きというのは本当ですし、間違いではないのですが、

時々、好きなんてレベルではなぁーい、と言いたくなるのも正直な気持ちです。

好きと愛するはちょっと、レベルが違う・・・という複雑な気持ちでしょうか。

 

今回の本は昨年台湾で先に出版された『この器と暮らしたい』のために書いた文章をベースに新たに取材をした作り手の方々の紹介や、日頃うつわと接していて感じたことを書き下ろしたものです。

 

なかには、これまでの展覧会のDMで使用した写真も入っています。うつわ祥見のお客様にとっては、あれ、見たことある! と懐かしく感じられるような一枚があるかもしれませんし、作家さんの紹介の文章も知ってる知ってる!と膝を打つようなこともあるかもしれません。

これからうつわをもっと身近に感じ自分の手でうつわを選んでみようかという方にも、気軽に手にしていただけたら、とても嬉しく思います。

本の形はいわゆる単行本サイズで、これまで上梓した本のなかで器の本では初めての判型となります。装丁は岡本一宣さん。ご縁をいただき、お願いすることができました。美しく丁寧で、カラフルな一冊となりました。

 

小山乃文彦さんの章の終わりに、

小山さんから教えていただいた言葉を記しました。

「戦争に反対する唯一の手段は各自が日常を美しくし、それに執着することである。」

吉田健一の言葉です。

 この言葉に、今、とても共感いたします。

特に、文学者・吉田健一があえて選んだであろう「執着する」という言葉に

平和を諦めないことは自身の暮らしを丁寧に

そして手放さないことであることを静かに学びます。 

 

うつわを愛することは日々を愛すること。

この気持ちを一生持ち続けていたいと思うのです。

 

本はまもなく書店に並びます。

ご感想をお寄せいただけたら嬉しく思います。

 

いつもこの日記を読んでくださっている皆様に感謝しています。

今日も器とともに朗らかにいらしてください。

展覧会や常設で、皆様とお目にかかりますのを楽しみにしております。

 

祥見知生