TOMOO SHOKEN

うつわとともに 祥見知生

はじめての山口へ

今年のゴールデンウィークも後半ですね。

5月の最初の旅は山口県へ行ってきました。

詩人・中原中也生誕100年を記念したイベントに参加するためです。

中原中也の生家跡に建てられた「中原中也記念館」は湯田温泉の中心部にありました。


中原中也が結婚式を挙げたという老舗旅館に宿をとり、お目当ての中原中也生誕100年を記念「サーカス小屋でコンサート」矢野顕子さんのコンサート会場へ。


矢野顕子さんのコンサートのゲストは友部正人さん。


3月に鎌倉で行った「小野哲平 早川ユミ展」の初日の集まりに来てくださった友部さんから直接聞いた今回のコンサート。


実は私は矢野さんのアルバムに収録されている矢野さんの歌う『愛について』や『フロッタージュ氏の怪物狩り』という友部さんの作品が好きなのです。


インタビュー記事を書いていた時代、ミュージャンの方にはよくお会いする機会がありました。大変不遜ながら、コンサートは関係者席・・・という恵まれた環境におりました。


そんなある日、たまたま矢野顕子さんの『ピアノが愛した女』というドキュメンタリーを生まれて初めてのレイトショウで観たのです。


そして、大変衝撃を受けました。

この映画は名盤『Super Folk Song』の収録の様子を追ったドキュメンタリーです。音楽界では常識な収録テイクのつなぎをかたくなに拒否し「一発録り」のために自分が納得するまで演奏を繰り返す彼女に圧倒され、たちまち私は「ヤノアキコファン」になったのです。

それからは、彼女のコンサートはすべて「自費」で何度も足を運んでいます。


そして、この2年間ずっと制作してきた『DVDブックうつわびと小野哲平』を作るうえで、私が強く思っていたのはこのドキュメンタリーのことでした。


『ピアノが愛した女』を観て、私は確かに生きることの喜びや「励まし」を受け取ったのです。わたしはピアノは弾けないけれど、彼女の愛する「仕事」の真摯さを心の深いところで感じることができたのです。
今でも、心の中にヤノさんが歌う『中央線』や『塀のうえで』が生きています。


『DVDブックうつわびと小野哲平』は、小野哲平という稀有なうつわびとの作陶の様子、薪窯に向かう姿を追いかけたものです。制作途中で何度かくじけそうになった時に、私は自分がこの作品をどうしても作りたいと思ったその「瞬間」の「思い」を信じようと思いました。少し照れくさいことですが、どこかで『ピアノが愛した女』が背中を押してくれたように感じています。


5月1日 特設テントで行われた『矢野顕子さんのコンサート』でヤノアキコさんは言います、「いま、世の中は家にいながらにしてさまざまな映像を観られる、私も持っていない過去のコンサートの映像だって観られる、けれど、今日ここで皆さんと分かち合った時間はわたしたちだけのものです」。

ヤノさんのおっしゃる通り、その「ライブ感」そのものが今本当に大切なものと思う。それは身体性というものの尊さにつながる。
たとえば友部さんのギター、そして矢野顕子さんのピアノ、演奏、ふたりの声。をその場にいて「感じる」ということ。


初めて訪れた山口の土地で。

言葉に尽くせない、すばらしい夜でした。


コンサートの中盤 矢野さんのところに最近メールでリクエストが来たという曲が歌われました。「わたしも忘れていて、ずいぶん歌っていない曲です、メールをくれた人は山口の人ではないけれどいいよね」とヤノさん

その曲は『ピアノが愛した女』で出会った曲の中で大好きになった『大寒町』(鈴木博文作詞作曲)でした。とても嬉しかった。



中原中也記念館は朝と夕 二度 足を運びました。中原中也が晩年住んでいたのが、鎌倉のお寺の中で一番好きな寿福寺の境内であったことや、家から程近い腰越の病院で亡くなったことを初めて知りました。
いまは中原中也の詩集や、友部正人さんの詩集を手元に置いて読んでいます。



『DVDブック うつわびと小野哲平』 

一般書店の発売が遅れましてご迷惑をおかけしています。
ゴールデンウイーク明けの週半ばには店頭に並ぶ予定です。

『DVDブックうつわびと小野哲平』オフィシャルページ http://dvd-teppei.com


ただいま 北の住まい設計社 名古屋店でうつわ祥見プロデュースの器の展覧会が行われています。

「テーブルにあるもの。展」
4月28日(金)〜5月13日(日)
時間 11時〜19時

会期中の定休日 5月2日(水) 5月9日(水)

くわしくは 

http://utsuwa-shoken.com/kikakuten/kitanosumaishanagoyahtml.htmをご覧ください。


会場はソファや椅子が心地よく置かれた空間です。

どうぞゆっくりとした気持ちで、器を一つひとつを手にとってご覧ください。

会期中、新刊の『DVDブックうつわびと小野哲平』や既刊本お求めいただけます。


次回うつわ祥見の企画展は「吉田直嗣陶展」です。5月10日〜19日 会期中は無休です。くわしくは、http://utsuwa-shoken.comをご覧ください。