TOMOO SHOKEN

うつわとともに 祥見知生

 「やぁ」・・・


ふと手にした本のページを開いてみると、言葉が飛び込んでくることが、しばしばあるものです。

今日は、わたしの寝室にある本棚を整理していて、

ほぼ日のスタッフの方から「弊社の本です。よかったらどうぞ」といただいた何冊かの一冊で

まだ開いたことがなかった糸井重里さんの「小さいことばを歌う場所」という本を

たまたま開くと

こんな文章が載っていました。



太陽の塔』は、

「ぼくのことが、わかるかね?」なんて言わないのだ。

「キミとは、やってられんわ」なんてことも、言わない。

ただ「やぁ」と、そこにあるだけなのだ、

とても無視しにくい姿で、ね。




わたしが反応したのは、

この「やぁ」とそこにあるだけ・・・というところ。


「やぁ」とそこにあったり、「やぁ」とそこにいるだけ・・というものの凄さ。

そして、「やぁ」とだけ言ってくれる、人やモノの存在の有り難さ です。


わたしは器のよさは

「なんでもないもの」のなかにあると信じていますが、

この「やぁ」という感じ・・・わたしのなかでは、「なんでもなさ」につながります。


なかなか、人は、現実には「やぁ」というスタンスではいられないものですが、

この距離感が好きだなぁ・・と思います。

妙に気に入りました。


さて、NEAR一周年記念のDMについてですが・・・

この、黒いくまの人形はなんだ、と皆さん、思われるでしょうか。




これは、NEARの真向かいにある「くろぬま」さんでわたしが見つけたゼンマイで動くプラスティックの人形です。

「くろぬま」さんは御成商店街でも老舗の紙やさんで、いまは「紙」とともに夏は花火、年間を通しては「水鉄砲」や「紙風船」などの懐かしい玩具を扱っているお店です。

何度も口にしているので聞いている方も多いかもしれませんが、

わたしはこの「くろぬま」さんが大好きで、

NEARの場所を決めたのも、目の前にある「くろぬま」さんの姿に一目ぼれしたから・・・なのでした。

昨年夏のご挨拶のDMも実は「くろぬま」さんの店の佇まいを写した写真を使わせていただいたのです。

そんな「くろぬま」さんで見つけたのが、このゼンマイで動くクマです。

いまは「くろちゃん」と名づけて NEARのカウンターにいてもらっています。

NEARでは器と人が出会い、ともにあってほしい・・・と願っています。

くろちゃんと一緒にいるのは、石田誠さんの南蛮焼き締めの小さな筒モノ。

なかなか「仲がよく」写っているでしょう。

わたしの気に入りの写真です。

そこに言葉を一行だけ入れました。

「Every day with utsuwa」

朗らかに くろちゃんが「やぁ」と言っているような・・そんな気がします。

器とともに朗らかに、飄々と・・。

毎日楽しいことだけではありませんが、

それでも笑って「やぁ」と言ってくれる人やモノと付き合っていきたいものです。


NEAR一周年記念展「器、そばにあるもの」は5月1日から始まります。

その前に、

今週金曜日4月23日から いよいよ小野哲平さんのNEAR オン・ザ・テーブル初登場「小野哲平 鉄化粧の器展」が始まります。

高知から器が届くのが楽しみです。


いよいよ明日19日は 国立新美術館地階SFTギャラリー「うつわハートフル展」の最終日です。


どうぞ皆様、お出かけください。


最近は次回のテーマの告知などをいたします。

次回は 「やきものと30年来付き合いのあるとおっしゃった方との議論」について やんわりと・・・

初めての「器の同窓会」についても・・・


では 皆さん 明日も 器とともに朗らかに一日をお過ごしください。

おやすみなさい。