TOMOO SHOKEN

うつわとともに 祥見知生

「いま」につながる記憶

おはようございます。

台風の影響で風雨が強くなっている地域もあるようですね。気をつけてください。

鎌倉は曇り空。窓を開けると涼しい風が入ります。

あきかぜ と口に出してみます。

秋風が連れてくる思い出は少しばかり寂しさを含んでいるのかもしれません。

わたしは北海道で育ったので、
真夏の光がある日もう二度と訪れないという「夏の終わり」を決定的に感じる日が明確にある、
ということを毎年経験して育ちました。

太陽の光が降り注ぐ夏が憧れの季節でした。

もっとやりたいこと、遣り残した夏があるはずだというのに、長袖をひっぱりださなくていけない理不尽さを子供ごころに感じていたように思います。

秋がやってくるのは、「あきらめ」のそんな或る日のことなんです。

こうして書いていると、たんすの引き出しのきしみ具合とか、押入れの横にあったクローゼットの扉の金具とか、窓から見える風景とか、庭の隅に咲いていたかすみ草に似た白い花のことや、飼っていた猫の毛並みの手触りとか・・・

あらゆることを一瞬に思い出します。

ふだん忘れている子供時代の思い出は、こころのなかの引き出しにちゃんと畳まれて いつでも取り出せるように入っているのだなぁ・・と思います。

多少「きしみ」が出てきた毎日のことよりも、かえってスムーズに出し入れできる引き出しのように思えてきました。

忙しい大人の時間よりも、子供時代の時間は 「間」がたっぷりとある「時」だったなぁ・・・と懐かしむと、気持ちがゆったりとしてきました。悪くないものですね。

子供時代の食卓のことを考えると、父と母と姉と囲んで食べた頃のテーブルが懐かしく思い出されます。

その毎日の積み重ねは確実に「いま」につながっているのです。

母が忙しい朝によく作ってくれたおかず、たとえば「キャベツとベーコンの炒め物」は、ペーコンを先に油を出すようにしっかり焼いていったん取り出し、その油で甘みを引き出すようにキャベツを炒める。最後にベーコンを加えてさっと炒める。料理と呼べないほど簡単な料理も丁寧に作ると本当に美味しい。いまわたしの定番のおかずになっています。

「なすとピーマンの含め煮」も、函館出身の母直伝の「イカのごろ焼き」も。

おかずは母から受け継いだものが多いです。

家族で笑いあって過ごした日々は 過ぎた過去の時間ですが、
目には見えなくても、こころのなかにはしっかりと息づいている。

こども時代の思い出は、「いま」を生きるわたしを確実に支えています。


さて、9月の展覧会「ごとものうつわ展」が9月10日から始まります。

もうすぐ作り手の皆さんから器が届き始めます。

小さな手に包まれる器たち、ぜひゆっくりとお出かけください。

「こどものうつわ展」は小さくてよい器に出会えるので、最近は男性のお一人でいらっしゃる方も多いのです。

小さめの碗、小皿、豆皿、このときにしか出会えない器たちもあります。ぜひご覧ください。

今日はこれからNEARへ行きます。

雨がいま、降ってきました。

畑の作物にとっては恵みの雨となりそうですね。

今日も一日、器と健やかに。皆さんにとって よい一日となりますように。



お知らせ

恵文社のサイトで うつわハートフルの特設ページが開かれています。→http://bit.ly/a5EM4d




○ うつわ祥見 こどものうつわ展

  2010年9月10日(金)〜9月16日(木) 11:00〜17:00 

  こどもの手に包まれるものは、素朴で、あたたかな、美しいものがいい。

  食べる道具として、いつまでも、家族のもとで愛される器を。

  うつわ祥見が大切に伝えたいテーマです。どうぞお出かけください。

  出展作家の皆さん

  石田誠  尾形アツシ 小野哲平 小山乃文彦 田谷直子

  谷口晃啓 村木雄児 吉岡萬理 吉田直嗣 

  矢澤寛彰 (漆)

  引き続き utsuwa-shoken onariNEARでご覧いただけます。

  9月17日(金)〜9月29日(水)会期中木曜定休 12:00〜19:00