“希望”ってなんでしょう ?
こんにちは。鎌倉は青い空が広がっています。
1月4日 今年の仕事始めの方も多いことと思います。
ただいま、東京・代官山蔦屋書店にて、高知で作陶する小野哲平さんの初めての作品集『TEPPEI ONO』の刊行を記念して、「小野哲平作品展」を行っています。作品集から初期の作品と新作の器が特別展示されています。
什器は京都の和紙作家のハタノワタルさんの作品です。器はうつろなるもの、入れものとしての器から「新たなものがたりが生まれてくる余韻」を感じさせてくれる展示台を作ってくださいました。とても美しい什器です。
書店という紙を扱う場所は、ジャズ喫茶がかつてスピーカーから流れてくる重厚な音を空間に染み込ませていったように、紙という、原始の素材から漂う気配を複層的にまとって、独特の空気が生まれてくるものですね。代官山は東京でも珍しい地下に水脈がそのまま残っている清らかな地です。そこに建つ書店の一角に、土や火という原始の力から生まれた器が並んでいる景観は、何か、独特の「気」が流れているように感じられます。人と原始の素材、それらが交差して出来上がり、組み合わさって醸し出しているもの。美しい交差、と感じられるのです。
今回急に決まったこの特別展示に際し、ハタノさんにこの場の什器をお願いいたしました。2400㎝の長さのある什器を京都から都内に運ぶのは大変なことで、年末の多忙な時にこの大仕事も含めて、展示協力を快く受けてくださったハタノさんに心から感謝をお伝えしたいと思います。展示の什器も販売していますので、ぜひ、みなさま、ご覧ください。
また、空間の壁には、若木信吾さんの写真が掲示されています。大きく出力したポスターの合間に貼られたオリジナルプリントは、写真家自らが壁に掲示されたもの。ぺたぺた・・・自由に貼っていったという具合の、かろやかで愉しいものです。写真は作品集には掲載されなかったものが多く、この本の制作において初めて若木さんが訪れた工房での写真を見ることができます。もちろん、それらの写真のセレクトは若木さんにお任せしました。小野哲平さんの作陶の姿とともに、哲平さんの笑顔の写真が多いです。
常々、陶芸家・小野哲平さんの魅力は、厳しく鋭い眼光とともに、あたたかく包む人懐こい笑顔にあると思っていました。
器は人の手が作り出すもの、どんなに消そうと試みても、器は作り手を映すものですが、作品集のなかに綴られた正直な言葉と、若木さんが撮影された笑顔のプリントを見ていますと、展示されている器が、ますます魅力にあふれ、まるで「だいじょうぶ、心配ないよ」と笑っているように感じられて嬉しくなりました。
ああ、超えていける。
と短く思うのでした。何が超えていけるのか、ああ、それはあまりにも複雑で言葉にしがたいものなのですが、
ふと、この本の帯を見ますと、そのひとつの答えがここにもう既に用意されていたようです。
“希望”ってなんですか ?
小野哲平さんの初めての作品集『TEPPEI ONO』、この書籍を包む帯に言葉を寄せてくれたミュージシャン・ハナレグミこと永積崇さんが書いてくれた言葉です。
明後日1月6日に行われる『TEPPEI ONO』刊行記念トークショーでは、本が生まれたいきさつをお話する予定でいましたが、すでに行われた京都の恵文社ではトークのテーマとして「なぜつくるのか」を掘り下げていったのに対し、今回はこの言葉について、哲平さんとともにお話したいと思っています。
さて、希望って、ほんとうに、なんでしょう。
この帯の言葉について、深めていきたいと思います。
トークイベントは19時半スタートです。この帯の言葉を書いてくれたハナレグミも、京都に続いて、哲平さんの友人としていらっしゃい、トークに参加してくれます。
新年早々のお誘いになりますが、
ぜひいらしてください。
また、会場では、初公開のうつわラジオが設置されています。
DJカチカイゾウ氏による、小野哲平さんインタビュー、ぜひヘッドフォンでお聞きください。トークイベントではDJカチカイゾウ氏に会えますよ。
ゆっくりお会い出来るのを楽しみにしています。
うつわ祥見 祥見知生