TOMOO SHOKEN

うつわとともに 祥見知生

高知エピソード4 ハナレグミスペシャルライブ


すべてのものごとには、はじまりがありますが、このスペシャルライブは、今からさかのぼること2年前『セツローさん』(ラトルズ刊)の執筆中に高知県の小野哲平さん宅を訪ねた春の日にはじまるように思います。その日、軽トラックの助手席にセツローさん(哲平さんの父)、ユミさんが運転。哲平さんと祥見が荷台に乗り、哲平さんの工房よりさらに山の上へ車で登り、初めて、山の上からの谷相の風景を見たのでした。
軽トラックの荷台から降りるなり私は叫んだのです。「これはムービーだ。これをムービーにしたい」と。青々と光を浴びて輝く棚田の風景、広くて高い空に雲がゆったりと流れていくそのさまは、どんなに言葉を尽くしても伝えることは難しい。けれど稲穂をゆらす風の動きも、夕刻にゆったりと暮れゆく空の色の変化も、雲がうまれる朝の山の気高さも、ムービーならば「伝えられる」。そんな思いから「DVDブック」の制作ははじまりました。

実際のロケが最初に行なわれたのは、その年の秋、2005年11月です。火入れから3日3晩寝ずに薪をくべ続ける薪窯の様子に、はじめて工房を訪れた映像カメラマンは次第に引き込まれていきました。高知から戻った彼は、「てっぺんにつながる道。あの美しさ。そしてそこに集う人々。彼らの美しさ。仕事が暮らし、暮らしが仕事。そういうことを撮りたい。」と語ります。以来彼は四季を通じて高知に通い、小野哲平さんの工房に寝泊りし、器づくり、家族との暮らし、薪窯の窯焚き、窯だしを撮影しました。撮影を進めていくうちに、スタッフは土や水や空や火・・・というわたしたち現代人が忘れてしまったかもしれない「生命のもとになるもの」を強く感じるようになりました。

映像をすべて撮り終えて、編集作業も佳境に入った今年の1月の半ばのことです。

うつわ祥見のスタッフのえっちゃんがもともとファンだったこともあり、前年の暮れの『小野セツロー手の仕事展』の会期中に流していた『ハナレグミ』のCDを聴いていて、突如思ったのです。この『明日へゆけ』をエンディングテーマに入れられないだろうか。と。
DVDブックは基本的にドキュメンタリー作品です。音楽も効果音も、ナレーションも一切いれず、シンプルな作りを目指していました。そこにきて、挿入歌を入れたい、という気持ちがむくむくと沸いてきたのは、とても不思議なことでしたが、実際に、画にこの曲を入れてみると、まるで、はじめから決まっていたかのような、錯覚を覚えたものです。

そして、嬉しかったのは、出来上がってほやほやの映像をハナレグミ永積タカシ君が見てくださり、「ぜひ使ってほしい」と言ってくださったことです。
そのときにいただいた自筆のFAXには、「少ない言葉の中に思いがギュッとつまっていて響きます。映画みたいでした。作者の時間がわが家にも届きました。家や山やしゃべり声がすごい気持ちよくて音楽みたいに耳が世界に入り込みました」と書かれていました。
その後の、ちょうど、あの軽トラックの日から2年経った5月の頃に、永積君は高知入りされ、哲平さんの工房を訪ねられました。

出会いというものは不思議なものですね。

今回の高知県立牧野植物園での「まきので食べるを考える」関連イベント『土から生まれるもの』では、
牧野富太郎記念館 本館和室で小野哲平さんの薪窯を中心にした作品展「土から生まれるもの 小野哲平展」を行なっています。碗、鉢、皿、そして存在感のある壺など、暮らしに根ざした器たちをご覧いただきます。和室という空間で、膝をついて座り、それぞれの器を手の中に入れて包み、「土」というもの、「火」というもの、人の「手」というものを、それぞれの「声」や「ことば」を聴くように、感じていたただければと思います。

そして、映像ホールでは、20日と21日の二日間、「DVDブックうつわびと小野哲平特別編 土から生まれるもの。」の上映会があります。

21日の13時からは、特別編の上映に続き、早川ユミさん(布作家)との「土から生まれるもの」についてお話会も予定しています。ぜひ聞きにいらしてください。また21日夕方には、牧野富太郎記念館 展示室 階段広場にて 「KNOB ディジュリドゥコンサート」があります。


リーフレット制作においてもとても不思議なことがありました。今回の「土から生まれるもの」の表紙の版画は荒木珠奈さんの作品を使わせていただきました。彼女の作品展を、今年の春にたまたま訪ねた新潟のギャラリーで見たのです。前日までわたしは映画『さよならCOLORのための音楽』というCDをずっと聴いていたので、会場にあった彼女のプロフィールを見て驚きました。彼女はこの映画でキーアイテムになったランプ、オブジェを制作、映画にも出ていたのです。

何かのご縁を感じ、またその作品の素晴らしさから、今回のリーフレットの表紙を彼女に頼みたいと考えるようになりました。その後、鎌倉へ来てくれた珠奈ちゃんの話を聞いてまた驚きました。彼女のお父さんの実家はかつて、この高知の牧野植物園がある五台山にあったのだそうです・・・。さらに偶然にも、永積君とは高校が同じなのですって。

そんなわけで、いくつかの不思議なめぐり合わせと、応援してくださった皆さんのお陰で、大好きな牧野植物園で実現した今回のライブ、皆で気持ちよく、一つになって、ハナレグミの音楽をこころから楽しんいただきたいと思います。(ハナレグミスペシャルライブチケットは完売しています。当日券の発売はありません。)

明日、いよいよ高知入りです。



2007年10月21日(日)は 高知ガイアデー

龍村仁監督映画『地球交響曲』第六番出演 KNOB高知初ライブ+「地球交響曲第一番」の上映があります。

くわしくは、http://kochi-project-gaia.blogspot.com