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うつわとともに。祥見知生のブログです。

 人生を朗らかにさせる器。春のどんふり展

こんばんわ。

ゴールデンウイークの最中ですね。

皆さま、どんなふうにお過ごしですか。

ゴールデンウイークという言葉、こうして真面目に書いてみますと、なかなかどうして意味ありげですね。

いままで無神経に使いすぎていたような気がいたします。

「商いびと」にとっては「かきいれどき」などと称されますが、国をあげての、休暇という「消費のための大移動」・・・のイメージがつきまとうのはなぜでしょうか。

やっぱり、震災以後は、こうした「使い慣れた言葉」にも、ひとつひとつ引っかかるものがあります。

そして、この「引っかかり」は、物事をより丁寧に見ていくうえで、「そのままにしない」ように大事にしなくては・・・と思ったりいたします。

さて、うつわ祥見では、ただいま、京都と鎌倉で、ほぼ同時開催で「春のどんぶり展」を行っています。

京都の恵文社では、今回、生活館の入り口のミニギャラリーでの展示です。


京都・恵文社


鎌倉・onariNEAR

それにしても、どんぶりという器は不思議な器ですね。

この器には、何か、人を安心させるのです。

緊張感なく、親しみやすいというのでしょうか。

器として、いままで、それほどスポットが当たるという器ではなかったのですが、

ないと困るし、なくても、どうにかなっていた・・・(逆に言うと、市販されている器としては数があるのでは・・・という印象もあり) 器なのではと思います。

どんぶり。

この言葉には、庶民の味方のような、なんとも言えない、親しみがあるようです。

わたしは、このどんぶりという器について、親しみを感じる一方で、大変難しい器であるように思っていました。

というのも、市販されているどんぶりは、量産品であればあるほど、「完成度」が高く、
そこに作り手が逆に取り組むとはどういうことか、と考えずにはいられなかったからです。

よく口にしていることなので、直接耳にした方も多いかもしれませんが、

「どんぶりは鉢になれるけれど、鉢はどんぶりにはなれない」のです。

どんぶりは手で持って食べる器であり、鉢は手に持たないので、その両者は、似ていても決定的に「手どり」や重さ、
ある意味「存在理由の宿命」が異なるのです。

そして、これまで、わたしは、鉢を作れても、よいどんぶりを真に作るのは大変難しいのでは・・・と直感しておりました。

石田誠さんとは、この話をよくしました。

すると、砥部焼の産地である松山で作陶しているこの方は言ったのです。

「よいどんぶりを作ることは、並大抵のことではないんですよ」

わたしはこの言葉を聴いて、本当にその通りだと思いました。

そして、だからこそ、作り手が真剣に「どんぶり」という器に取り組むべきなのではないか、取り組んで欲しいと思うようになったのでした。

また、使い手であるわたしたちにとっても、器に興味を持ち、気に入った器で食事をされている方でも、お気に入りのどんぶりを手にされている方は少ないのではないかと感じます。

その理由は明快で、実はこの「どんぶり」という器に取り組む作り手は少ないからです。

そのため、作り手の個展に足しげく通っても、どんぶりに出会う確立は低く、気がつくと、
「あれ、どんぶりだけ、何か違うものを使っていたぞ」という方が案外多いのではないでしょうか。

そんなことも受け、今回うつわ祥見では、どんぶり展を長崎の2月を皮切りに、京都、鎌倉、そして秋には札幌で開催することになったのです。

京都・鎌倉に集ったどんぶりは、確実に「進化」しておりました。

それらの器は、それぞれの作家が「お題」に取り組んだ、「答え」のような仕事です。

これぞ「どんぶり」という器があります。しかし、それも、おそらくは発展途上なのですが、
現時点で、これらの仕事は作家の一つの答えなのだ、と見ていただければと思います。

美しいこと、素朴であること、そして、何よりも、「どんぶり」としての存在感。

どこか飄々として、籠もっていない開かれたもの。食卓を朗らかにする明るさ。

ああ、よいどんふりを手に入れた・・・と皆さん、満足してくださっているのではないでしょうか。

わたしは冗談のように言うのです。

この世の中で、たとえば人生のチェックリストというものがあり、その質問項目に「よいどんぶりを持っていますか?」の設問があったら、これからは、自信を持って「はい」にチェックしてくださいね・・・・

初日に鎌倉にお出かけいただいた若いご夫婦は、この私の話を聞いて、とても愉快そうに笑っていらっしゃいました。

また別の方は、「自分が思い描いていたどんぶりに本当に出会うことができた」と、満足そうに、そして、愛しい顔を隠すことなく、器たちとともに帰られました。

こんなふうに、着実に、器は手渡っていきます。

展覧会に集った器たちは、何よりも、真剣にテーマに取り組んだ器たちです。

ぜひ多くの方に手にとってご覧いただきたいと思います。

京都・恵文社、鎌倉・onariNEAR 「春のどんぶり展」は5月11日まで。

よいどんぶりは人生をより朗らかに、いきいきとさせる力があります。

ぜひお出かけください。