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うつわとともに。祥見知生のブログです。

高知県立美術館主催 『TABERU 日々のうつわ 手に包まれる食の道具』 が初日を迎えました。


今日は7月2日。時刻は正午となるところです。

昨夜、最終便で高知から戻ってきました。

鎌倉でふだんの朝を迎えています。

昨日、7月1日。

高知県立美術館主催 『TABERU 日々のうつわ 手に包まれる食の道具』 が初日を迎えました。

春以降、ずっと、取り組んできた仕事です。

県立の美術館で、こうした「日々の器」を紹介する展覧会を開催するのは 大変有意義なことです。

「展覧会ABERU」は、東京・国立新美術館地階ギャラリー、札幌、松本、京都、高松、長崎の各地のギャラリーで行われました。

めし碗、湯のみ、皿、鉢など、日本の食卓にかかせない日々の器を伝えてきました。

このたび、高知県立美術館で展覧会「TABERU」が開催されることになり、
器という身近な道具をより感じていただくことで「食べる」ことを見つめなおす機会になればと、展示内容を考えました。

展示は3つのコーナーにわかれています。

まず「100の時間 100の器」では、使われて育った器の美しさを。

高知県香美市にて作陶されている小野哲平さんの薪窯焼成の器を展示には「小野哲平のいま」と題し、
素朴で美しい土の器をご覧いただきます。

そのほかにも高知県の若いつくりびとの手の仕事をご紹介します。



わたしにとっても、やりがいがあると同時に、大変責任のある大切な仕事として、
この展覧会に取り組んできました。

小野哲平さんの薪窯の仕事は、今回、台風の接近で、
一度中断した影響でふだんより14時間余計に焚き上げた
渾身の仕事です。

その器たちのなかから、めし碗、湯のみ、皿、小皿、鉢、大皿・・・・と総数100点余りを
選ばさせていただきました。それらの器を「小野哲平のいま」として、展示しました。


こういうとき、哲平さんは、わたしを信じてくださっているのですね。

すべて、選者としてのわたしに任せてくださる。

哲平さんの展示する器はわたしが今回高知入りした28日に 工房を訪れた時間に、選らび終え、
その翌日、美術館へ運ばれたのでした。

初日を迎えて 今度は、しみじみと 鑑賞者として、それらの器たちをゆっくりと拝見しましたが、
なんとも言えない素晴らしい器たちが、静かに、そして力強く並んでいました。

普段のギャラリーでの展示では 味わえない、器との距離・・・それは「手に入れる入れない・・つまりは所有の欲から解放された」器との心地のよい距離がありました。

器そのものの存在を、より感じられる。

ふだん熱心に器に興味のある方にとっても、そうでない方にとっても、
それは大変貴重な、体験ではなかろうか・・・と思います。

そして、今回の展覧会で、わたしが皆さんに伝えたいと願ったのはまさに、「器を感じる」ということなのです。

「100の時間 100の器」では、使われて育った器100点を展示しました。


そのなかには、作り手の皆さん自身が実際に使っている器や、2005年に急逝された青木亮さんの器も含まれています。


今回、会場を訪れる皆さんにお配りする 配布資料に、「器を感じるということ」と題し、言葉を書きました。


少し長いですが、全文を紹介します。


 
器を感じるということ

器を見るうえで大切なのは、こころの眼で見ることです。
こころで感じ、見ることです。
やきものには、その長い歴史のなかで、時間にかけて名づけられた「名前」があります。
作り方、産地、その器が生まれた背景、技法などがその名にあたります。
やきものを知るために知識が必要と思われる方も多いと思いますが、
名を知ることばかりにこだわっていると、見落としてしまうことがあるのです。
それが、ひとつひとつの器の個性です。

本展覧会では、器の個性を感じる、という見方をしていただきたいと願っています。
器を深く感じていただけるように、あくまでシンプルに展示しています。

器は手に包まれる食の道具です。

食べて生きていく、そのくり返しの、なんでもない時間をともに生きるものです。

少し欠けた茶碗、シミができた皿もあります。

それらは作り手の手を離れ、使う人の手の包まれて育ったものです。
器は使われて「育つ」のです。時間とともに、なんともいえない味わいが出ています。
その味わいこそが、器の勲章とも言うべき「使われた時間」です。

器は、食卓のうえで、人の手のなかに包まれ時を経て、美しく育っていきます。
器とは、器のかたちをした「時間」そのものではないでしょうか。
器には、使い手の時間が降り積もります。
日々の器をこうして眺めたときに、そのことが、こころに深く響きます。

100の器には、100の時間。
名もなき人の、かえがえのない、生きた記憶。
愛しい時間がここにあるのです。

ディレクター 祥見知生 

  


100の時間 100の器」の展示において、作り手、使い手の皆さまより、大変貴重な器をお借りいたしました。

趣旨をご理解し、ご協力をいただきました皆さまに、心より感謝申し上げます。

展示室の一番奥には、高知のつくりびと と題し、5人の若い作り手の皆さんの仕事も紹介しています。

あわせて ご覧ください。


初日にいらした皆さんは、「とても一日では足りない」と、率直な言葉で、この展示の器たちについて
おっしゃっていました。

企画をしたわたし自身も、どんなに時間をかけて見つめても、飽きることがないほどなのです。



上の写真は、実際に器に触って手に包んでいただくコーナーです。



また、先日の日記でもご紹介した 

今回の展示を記念して作られた新刊『器と時』はミュージアムショップにて発売されました。

展示の器の写真を中心にオールカラーの80ページの本が出来上がりました。

大変貴重な器たちが収録されています。

何しろ、この展覧会には村上躍さん、吉岡萬理さん、森岡成好さん、村田森さん、小野哲平さん、
横山拓也さん、村木雄児さん、尾形アツシ、小山乃文彦さん、石田誠さんなどの作り手の皆さんや、
こうした現代作家の素晴らしい昨今の傑作とも言える器を展示のために協力いただいた方など、
一期一会の器たちが集ったのです。


さらに、ミュージアムショップでは、小野哲平さん、尾形アツシさんの器も実際に求めることができます。

小野哲平さんの器はこのたびの展示と同じ窯の器です。
 
 
会期ははこれから1ヶ月以上あります。8月12日まで。

ぜひ、皆さま、高知へお出かけください。

この機会をどうぞ見逃さずに、展覧会会場に足を運んでください。

きっと、心に深く、感じていただけると思います。

食べることは生きること。器は食べる道具。

器は生きるための道具です。

本展を通じて、大変身近な、そして生きる要である「食べること」を見つめていただければと思います。

原発の再稼働で揺れる日本で、信じられるものは何か。

わたしは「食べる」ことが、これからのすべてのものごとの中心であるべきだと信じています。

「食べる」をもっとまなんかに。「生きる」をもっと確かなものに。

諦めることなく、そのことを、わたしは「器」を通じて 伝えていきたいと思います。



「TABERU 日々のうつわ、手に包まれる食の道具たち」

日時 2012年7月1日(日)〜8月12日(日) 

      午前9時より午後5時まで(入場は午後4時30分)

会場 高知県立美術館1階第4展示室

    〒781-8123高知市高須353-2 TEL088-866-8000/FAX088-866-8008

主催 高知県立美術館  ディレクション 祥見知生(うつわ祥見)

後援:高知県教育委員会 /高知市教育委員会/高知新聞社/RKC高知放送/

NHK高知放送局/KUTVテレビ高知/KSSさんさんテレビ/KCB高知ケーブルテレビ/

エフエム高知/高知シティFM放送

関連イベントとして、「器を感じるワークショップ」や「大貫妙子さんライブ」などが行われます。

くわしくは、高知県立美術館のホームページをご覧ください。

http://kochi-bunkazaidan.or.jp/~museum/contents/exhibition/collection/2012/2012taberu.html