TOMOO SHOKEN

うつわとともに 祥見知生

 2010年、ありがとうございました、そして・・

こんばんわ。

いま、時刻は2010年12月31日 今年もいよいよ 夜も深まってきました。

いよいよ年の暮れですね。

皆さんにとっての今年の一年はどんな年だったでしょうか。

1年間を振り返っての雑記を書こうと思いたち、まとめてみるつもりで始めてみたのですが、

先日は5月まで・・・というところで一日ブランクとなってしまい、さてさて、今年が終わる前に書き終えるのだろうと、不安になりつつ、書き進めてみます。

さて5月。

常滑の小山乃文彦さんの個展。

土味のある粉引きにこだわり作陶される小山さん。
この数年の仕事へ向き方が器そのものにあらわれてきていることを感じる展覧会となりました。

DMには、『見るべきもの』=『見てほしい』を伝えたいと思っていますが、小山さんのDMでは、
器の裏の顔、削りの良さを見てとれる高台を写真に撮り、DMと作りました。


実はこの5月に、私にとって、忘れられない一夜がありました。

念願だった「器の同窓会」を開き、お集まりいただいた皆さんの、
お宅で使われ育った器たちとの再会を果たしたのです。




使われて育った器たちはどれもよい顔をしていました。

ご参加くださった皆様に、改めて 感謝いたします。

ありがとうございました。わたしはこの夜、本当に幸せでした。



この夜に感じたことはとてもこの短い文章のなかで紹介できるものではありません。

いずれ、きちんと文章にまとめたいと考えています。(次回の本を書きたいと思い始めています)


6月に入ると、onariNEARでは「夏の日。茶漬碗展」、うつわ祥見では「吉田直嗣陶展」が行われました。


DMの写真は尾形アツシさんの粉引き碗です。わたしにとって「茶漬け」は憧れの食べ物であり、夏の日にさらさらと粋な茶漬けをいただく、そんな美しくも品格のある器を伝えたいと思ったのでした。

「夏の日・・・」という言葉に惹かれて訪れてくださる方が多い展覧会でした。

吉田直嗣さんの器のよさは、少しずつ目には見えないくらいさり気なく、作り手が闘っている様子が見てとれるところではないかと私は感じています。

その「さり気なさ」は格別なもので、一言で言うと「センスがよい」とか「筋がよい」などと形容されがちなのですが、

私は吉田さんが独立された直後からのお付き合いで、器の進化というのかな・・・見せていただいて、感じるんですね。

吉田さんの考える「器」というものへの本気さが痛いほど感じられる。だからいつも、器を見せていただくことを楽しみにしています。

 

ふたりで鎌倉の小さなバースタイルの店食事をしながら語り合ったことが思い出されます。かなり深い話をできたので信頼が深まったかな・と思います(ちょうどワールドカップサッカーの中継をやっている店で、誰もが大声で話していたような店でしたので、わたしたちも大声で「器は・・」とか「釉薬が・・」とか叫んでいたような気がします)


7月には、毎年恒例の 己亦敬一さんのガラスの器展が始まりました。


今年はDMの小鉢が大変人気があり、すぐに完売になってしまいました。

うつわ祥見での会期が終了した翌日から NEARでも引き続き、行われた展覧会でしたが、完売になった器が続出したため、

「来年はうつわ祥見の初日に行かなくては・・」と心に誓った、という方がたくさんいらっしゃたようです。

海の日の連休には、京都の恵文社で「うつわハートフル展」が行われました。

初日に丁寧に見てくださる皆さんがお出かけいただき、わたしもお目にかかれてとても嬉しく思いました。

来年は11月に京都で展覧会を予定しています。

そして8月。

札幌のチョロンで「うつわハートフル展」

初日は平日でしたのに、大変多くの皆さまにお出かけいただきました。


チョロンでは昨年に続いて2回めの開催でしたので、一年前にお会いした皆さんとの再会も本当に嬉しかったです。

会期中に何度も何度も足を運んでくださった皆さんがいらしたとか・・

夏休みで関東地方から実家のある札幌へ帰省されている方がいらしたり、京都から毎年駆けつけてくださる方がまた今年も来てくださったり、

わたしにとって、札幌での器展の開催は特別な思いがあります。

皆さんの家で、器たちはどうしているでしょう・・・か。

また来年、器たちの様子、お聞かせください。札幌では8月にまた器展を予定しています。

一方、鎌倉では「白と影と展」が行われました。


韓国の旅から帰られた村田森さんが取り組んだ三島手の器が多くの皆さんの心を揺すぶりました。

いまもあのときの三島の鉢のことを思います。

わたしの手もとには残りませんでしたが、この眼には、心のなかには はっきりと、あの器の凛とした美しさが残っています。

唐津の竹花正弘さんなど、新しい作り手の参加もあり、素晴らしい器との出会いが生まれた真夏の展覧会でした。

会期中の8月14日と15日には夜21時までオープンした「夜のバータイム」を行いました。
お向かいのくろぬまさんで花火を買いました。夜、器たちと過ごす時間は格別でした。

9月は「こどものうつわ展」が行われました。


こどものうつわ展は2002年のオープン以来、大切に伝えているテーマ展です。

こどものために作るのではなく、小さくても美しい本物の器を伝えたいのです。

今回は小山乃文彦さんの粉引きめし碗がどれも「心が感じられる」丁寧な仕事でとてもよかった。

そして石田誠さんの数字の描かれた皿・めし碗のシリーズが、またまた人気だったことが印象深い。

器にはものがたりが生まれてくる・・・そんなことを感じさせてくれる展覧会でした。

生後数ヶ月の赤ちゃんを連れて器を丁寧に選ばれるような若いご夫婦が訪ねてくださったことは嬉しいことでした。

この9月から、「樹と言葉展」の展示に向けて高知への出張が多くなり、打ち合わせも頻繁になっていく。

早川ユミさんの『種まきびとのものつくり』の鎌倉合宿も行われ、本づくりもだんだん「かたち」が見えてきたところ・・。

10月はNEARで「矢尾板克則 ノート・ブック展」が行われました。

店内には矢尾板さんの作品とともに「ブック・ピック・オーケストラ」が選んでくれた書籍、洋書が並びました。


わたしにとっては「NEAR」は人のそばにあるもの・・・という意味で名づけた店でしたので、本を並べてみたいという気持は最初からあり、
その思いが実現した展覧会でした。

矢尾板さんのノート・ブックは、どこか懐かしく、せつなく、小粋で、胸にじんと来るような陶の作品でした。音楽が聴こえてくるような作品は独特の世界観が映し出されている。それはまぎれもなく、ヤオイタワールドなのでした。

この展覧会の初日には、御成通りのユニバイブで、高田漣さんのソロライブが行われました。

漣さんの選曲、歌、中島ノブユキさんとの演奏は、本当に素晴らしくて、わたしも胸がいっぱいになりました。

音楽っていいですね、ダイレクトに胸に響く・・・のですから。わたし自身、すっかり漣さんのファンになりました。(CDにサインしていただたり、握手していただり・・こんなことは初めてでした)

そして高知では、いよいよ高知県立牧野植物園で「樹と言葉展」が始まりました。

このときは4泊5日の高知入りになりました。

その前の週にも高知入りしていましたので、一ヶ月の間に、高知で過ごす時間が長い月でした。


24日には大貫妙子さんのライブが行われました。

樹の言葉を出展してくださった大貫さんと、わたしは初めてお目にかかりました。

雨の降る植物園で幻想的とも感じられる、言葉と歌、音楽・・・。大貫さんの意思のある言葉が植物たちをも巻き込んで、素晴らしい「贈り物」のような時間を与えてくれました。

アンコールの拍手が鳴り止まない、素晴らしいライブでした。

打ち上げの夜の料理屋で、たくさんの話をしました。

「あなたは樹の人なんだから、もっと頑張らなくちゃだめよ」と大貫さん。

大貫さんが数年前に行かれたコスカタリカの旅行記が掲載されたJALの機内誌を、わたしが大切にしていることを伝えると

「あなたも行くといいよ」とコスタリカの素晴らしい自然について話してくれました。ナマケモノに会えたときの動作を交えて話してくれた様子は本当にチャーミングで、ますます大貫さんが好きになりました。

そのあと、大貫さんはご自分で田植えをされた玄米を届けてくださいました。この玄米が美味しい。

坂本さんとのUTAUの東京公演でも、プロの仕事に、ますます惚れ込みました。

そして10月の終わりには須田二郎さんの木のうつわ展がありました。

最近はどこのギャラリーでも人気ぶりが話題となる須田さん。実はうつわ祥見が彼の初個展の場なのでした。

森を守り、木を生かすという仕事を、須田さんはひたむきに続けていらっしゃる。

その姿勢は変わらないのです。最近はマスコミも、そうした仕事の姿勢を「地球環境に優しい仕事」として取り上げられることが多くなったそうで、須田さん自身も「時代が追いついてきた」と感じていらっしゃるそうです。

わたしは淡々と、初心を失わず、木がすべて教えてくれた・・と素朴な須田さんでいてほしいと思います。
来年も同じ時期に、また展覧会をお願いしました。


11月に入り、須田さんの展覧会が終わった翌日に、またすぐに高知へ飛びました。今度は「樹と言葉展」の関連イベントで
松浦弥太郎さんのトークイベントがあったのです。

とても寒くて冷たい雨の降るあいにくのお天気でしたが、
弥太郎さんと高知の版画家・松林誠さんのやりとりはお二人の人柄そのままに温かいものでした。

お出かけいただいた皆さん一人ひとりに握手をしてお礼をおっしゃる弥太郎さん。

「どんなときも心を開いていく」ことの大切さを間近で見せていただいたように思います。

松林誠さんのことは、前々からお聞きしていましたが、本当に心から大好きになりました。

いずれ鎌倉や東京で、松林誠さんの展覧会をしたいものです。素晴らしいのですよ、皆さんに早く紹介したい方です。

そして11月のNEARでは田谷直子さんの暮らしの器展が始まりました。

瑠璃釉の器を中心にした暮らしに根ざした器の展覧会です。


わたしは田谷さんの器を手にすると、安心するんですね。

なぜか・・・それこそが「暮らしの器」と呼びたい一番大きな理由なのですけれど、やはり「使ってこそ」の器そのものの良さをひしひしと感じられるのですね、田谷さんの器には。その根底にあるものが、当たり前の暮らしなんだな・・と感じます。

若い方もふくめ、たくさん多くの方に鎌倉までお出かけいただいた展覧会となりました。

時を同じくして、長崎・諫早のオレンジスパイスで「うつわハートフル展」が始まりました。

この展覧会も、今年一番心に残る展覧会の一つとなりました。

器を伝えるのは、「人」なんだなぁ・・と実感する、心のある展示、わたし自身が満たされるような素晴らしい展示でした。

オレンジスパイスへお出かけくださった皆さまのなかには、県外からわざわざいらしてくださった方が多く、
展覧会初日に行われた話会でも、遠方から駆けつけてくださった方がいらして、嬉しかったです。

器を通じて、さまざまな出会いがある・・・本を読んで訪ねてくださった方に、わたしのほうが励まされました。

初日の夕刻、このままもう少し器たちのそばにいたいと願いつつも、器を残して安心してわたしは鎌倉に帰ってくることができました。

そしてうつわ祥見では、待ってました・・石田誠陶展が始まりました。

DMの『石田誠の仕事。』は、2010年今年1月の「村田森の仕事。」と対をなすものでした。

最後までぎりぎり南蛮焼締の器を出展されるかどうか、先が読めない展覧会でした。

けれど、わたしは信じて待ちました。

そして、新作のスリップウエアーが届きました。

このあたりはまだ記憶が新しいことと思います。

夜に誠さんと一緒に食事をしながら、さまざまなことを話しました。

誠さんは翌日、故・青木亮さんのお墓参りに行かれて 今回の展覧会について報告されたそうです「ショウケンさんを紹介してくれたのは青木さんですから」と松山に帰られた誠さんは電話で教えてくれました。電話を切ったあと、わたしはそれを聞いて泣きました。身体が震えて、涙が止まることなく流れました。そして、思いました。これからも、もっともっと仕事をしようと思いました。器を伝えるという仕事をやりぬくのだ、と強く思いました。信じる作り手とともに、これまで以上に仕事をしようと思うのでした。


そして12月を迎えました。

早川ユミさんの『種まきびとのものつくり』が無事出版された日、12月2日に、ちょうど東京・広尾のカイカイキキギャラリーで小野哲平さんの展覧会搬入があり、わたしも午前から会場入りし、展示の手伝いをしました。

器をいかに「見せるのか」。わたしなりの提案をお伝えし、そのまま生かされた展示もありました。

わたしにとつては、この土の器が、翌日になれば多くの人の手に包まれ、手渡されていくことの事実こそが素晴らしいことでした。

実際、800人以上の方がこの展覧会を訪れ、めし碗などはほとんど完売だったそうです。

1000点の器を生み出した哲平さんの仕事は素晴らしかった。けれど、この1000という数字、はっとしてわたしは哲平さんに言いました「1000点、すごい数字だけれど、冷静に考えれば、たったの1000点なんですよね」。

この問いかけに対する哲平さんの答えが素晴らしいものでした。

「でも、1000じゃないでしょ」。

器は使われて手に包まれて、たとえ1000個であっても、それが何倍何十倍の数の人の手に包まれる可能性があるのだ・・ということをおっしゃったのですね。

ああ、本当にそうだな・・・やっぱり器って素晴らしい可能性を持っているんだな・・と思います。


onariNEARでは矢澤寛彰さんの漆のうつわ展が、うつわ祥見では深田容子さんの冬支度のうつわ展が行われました。

どちらも丁寧な仕事が一目みれば伝わる器たちが並びました。

わたしもスタッフの神田も、器から感じたことをそのまま言葉にして伝えます。

「ああ。本当に、この器のここがよいと思うのです」その言葉は華美になることはありません。

器そのものの姿、使い心地を、「共感」して、その言葉を飾らずに伝えたいと思うのです。なせなら、それこそが人の手に包まれる器というものですから。

途中で年越しにいただいた手打ちのお蕎麦をいただいたり、休み休み書いていたので、ずいぶん時間がかかってしまいました。

もう時刻は23時30分です。

あと30分ほどで今年が終わるのですね。

皆様、今年一年お世話になりました。

うつわ祥見での展覧会へお出かけくださった皆様に 心より感謝申しあげます。

皆さんがいてくださって、わたしも、器を伝えることができます。

2011年、あと少しで 新しい年がやってきます。

新年は1月6日より、奈良の吉岡萬理さんの展覧会でスタートします。

初日には萬理さんが奈良から駆けつけてくださいます。

色絵の新作、鉄彩、そして最近取り組まれている長石釉の志野茶碗も初登場します。

ぜひ皆様、お出かけくださいますように。


器と一日、器と一年。

新しい年も、器とともに朗らかに。

どうぞ宜しくお願いします。

皆様、どうぞよい年をお迎えください。


最後まで読んでくださって ありがとうございました。


ただいま 2010年12月31日 23時40分。

良いお年をお迎えください。



祥見知生