TOMOO SHOKEN

うつわとともに 祥見知生

毎日更新10日め


今日で10日め。長い坂道をひとりで上っているみたいな気持ちです。

今朝は6時半に目が覚めて、いまパソコンの前に座って、この文章を書き始めました。

きのう、電車に乗っていると、人の幸せについて考える癖があるということを書きましたが、どちらかといえば、わたしにはそういうことを考える「性質」があるのだと思います。

「性質」なんていわずに「性格」といえば済むのかもしれないけれど、ここは「性質」なんですね。

「性格」でいえば、おせっかいでずぼら・・・でも情熱的かもしれません(笑)。

「性質」といったのは、そうせずにいられない「たち」であるという意味で。

この文章の初日に触れた前田秀樹さんは『倫理という力』のあとがきで、この本を書き終えた感想を自分の気持ちと照らし合わせていくつか触れたあとで次のように書いています。

「・・・・この本は、当然他の人たちにも何かの参考になるだろう。ならならければ意味がない。とりわけ、よく生きる、ということが、いつも、どうあっても心に戻ってくる問いである人には、読んでもらいたい」と。

そして、現実の社会に起こっている不条理、毎日見聞きする事件などをさしていると思いますが、「わたしたちの向き合っている昨今の社会状況は、こういう人の胸をいやでも騒がせることだろう。この状況をどう打ち破るか、というような偉そうな議論はたくさんである。大事なのは、それでもよく生きようとする願いを、試みを、捨てないことではないか。そう考える人には、この本は一人のよい話相手になると思っている。それくらいのことは書いたと思っている。」と書いていらっしゃる。


よく生きるということがどうあっても心に戻ってくる問いである人・・・・

この一行に、わたしは深く頷く者です。

ふだんわたしは、器の作り手の工房を訪ね、その人がどんな場所でどんなものを食べ、どんなことを考えて器を作っているのかを知り、そしてできるだけ一緒にごはんを食べたり、いろいろなことを話すことを大事にしてきました。

ある展覧会を作り上げるまで、約2年という時間を、そういう「作り手との会話」に費やしたこともあります。

彼らとは、とりもなおさず、「よく生きる」ことについて話しているのですね。

生きる道具である器を「本当に作ろう」とすれば、ぶちあたるのは、その人の「生き方」なのだと、「よく生きること」なのだ、とつくづく思います。

テクニックでもなく、釉薬の調合でもなく、かたちでもなく。

必要なのは本当に「生きること」なのだと。

うつわ祥見で器を求めてくださった方から、大変嬉しいお手紙をいただくことがありますが、お手紙をくださる方の多くは「器を通じて、生きることについて考えた」と感じてくださっているのです。

そして、わたし自身もそうなのです。


わたしはよく名前を書くときに、下手なめし碗の絵を線画でひょいと描くことがありますが、そのとき「一客のめし碗で世界が変えられるかもしれない・・・という願いの画です」と説明するのです。(説明できなかった皆様、あのへたくそな絵はそういう意味があるのですよ(笑)。

一客のめし碗で世界を変えられるかもしれない? なんて馬鹿馬鹿しい・・・

けれど、実際に、私自身が、器というものを通じて「変わった」のです。

世界を変えられるのは、つまるところ、人のこころに静かに訪れる「変化」なのではないか。

誰かの受け売りを大声で叫ぶのではなく、人のこころの深いところに響く「何か」なのではないか、と思います。
それは、改革と呼ぶには静かすぎる「変化=チェンジ」なのではないでしょうか。





●うつわ祥見の次回展覧会は木工家・須田二郎さんの木のうつわ展です。

2年ぶりの個展です。4月24日〜4月30日。初日に須田さんが在廊予定です。




●「吉岡萬理 カルロス君と色絵の世界展」 馬喰町 ART+EAT

2009年5月7日(木) 〜5月23日(土)

11:00〜19:00 金曜日は21時まで  

日月休廊 会期中休み 5月10日・11日・16日・17日   

最終日は17時まで

関連イベント

5月9日(土)  記念イベント

『カルロス君を想う』野菜料理とライブ「カルロス君のうた」発表会

 カルロス君のうた (作詞:shokentomoo 作曲:武徹太郎)

18時受付 18時30分スタート

会費 3000円(税込) 

http://www.art-eat.com/

大阪ブックギャラリー「イトヘン」で、吉岡萬理+祥見知生連載コラムが再開しました。

萬理さんの楽しく、明るいエネルギーが感じられるコラム、そして、わたしも相手が萬理さんとあって、とてもリラックスした文章を書いています。



http://www.skky.info/top.html



●うつわ祥見の新しい空間 utsuwa-shoken onari NEAR が5月1日オープンします。

「よい器は、ここに来れば いつでも会える」 

そんなお店になりますように。 

鎌倉の裏駅から徒歩4分ほどの、「御成通り」の端っこです。

時間がゆっくりと流れているこの通りで、「器を伝える場所」を。

器を通じて新しいものがたりが生まれたらいいなぁ・・と思います。

また多くの方と出会えることを願っています。




●セツローのものつくり展

東京・国立新美術館 地階 SFTギャラリー

  

2009年3月18日〜4月20日 

くわしくはこちら→ http://www.cibone.com/sft/sftgallery.html




東京都港区六本木7-22-2 国立新美術館B1

TEL: 03-6812-9933 FAX: 03-5775-4670 

10:00-18:00 (金曜日のみ20:00まで) 

毎週火曜日定休(祝日又は休日に当たる場合は開館し、翌日休館)

アクセス

東京メトロ千代田線乃木坂駅6出口

東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩5分

都営地下鉄大江戸線六本木駅7出口から徒歩4分